研究課題/領域番号 |
18K05433
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長尾 耕治郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (40587325)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Phospholipid / Drosophila / DESAT1 |
研究実績の概要 |
物質輸送や情報伝達、細胞分裂など生体膜を場とする細胞機能の多くは生体膜の脂質組成の変化の影響を強く受ける。このため、細胞機能を維持するために、生体膜の脂質組成は積極的に制御されていると考えられている。例えば、リン脂質を構成する脂肪酸に含まれる二重結合の数は生体膜の物性を変化させるため、脂肪酸に二重結合を導入することで不飽和脂肪酸を生合成する脂肪酸不飽和化酵素の発現や活性は厳密に制御される必要がある。しかしながら、生物がどのように生体膜の脂質組成の変化を感知し、その変化に適応しているのかはよくわかっていない。これまで生体膜脂質の研究に主に用いられてきた哺乳動物には二重結合の導入部位が異なる複数の脂肪酸不飽和化酵素が存在する。一方、ショウジョウバエには⊿9位に二重結合を導入する⊿9脂肪酸不飽和化酵素しか存在していない。また、ショウジョウバエには生体膜の物性に影響を与える多価不飽和脂肪酸やステロールがほとんど存在しないため、ショウジョウバエにおける生体膜脂質の制御は比較的シンプルであると想定される。このため、ショウジョウバエは生体膜の脂質組成の変化を感知し、適応する機構の解析に適した生物である。そこで本研究では、ショウジョウバエを用いて、生体膜脂質の制御機構の解析を行う。我々は生体膜の脂質組成を改変したモデル細胞を作製するために、⊿9脂肪酸不飽和化酵素を欠損したショウジョウバエ培養細胞を樹立した。そこで本研究では、⊿9脂肪酸不飽和化酵素欠損細胞を用いて、生物が生体膜脂質の恒常性を維持する機構の解明を目指す。また、培養細胞にて得られた知見をショウジョウバエ個体を用いた研究により検証することで、細胞膜脂質の生物学的機能解明へと繋げる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
⊿9脂肪酸不飽和化酵素による生体膜脂質の制御を介して構造と機能が顕著に変化する膜タンパク質を同定し、その制御の細胞機能における役割を解明した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに見出した細胞内小器官以外の細胞内部位においても、⊿9脂肪酸不飽和化酵素が生体膜の脂質組成の変化に応答した機能変動を示すことを見出している。今後、この機能変動の分子機構およびその細胞機能における役割を解析することにより、膜脂質代謝を介して生体膜脂質の恒常性を維持する機構のさらなる解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、研究活動の遂行に影響が生じたため、2020年度に予定していた研究の一部を2021年度に実施することにした。
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