研究課題/領域番号 |
18K05439
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小川 貴央 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (80603802)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ビタミンB2 / リボフラビン / 転写因子 / 輸送体 |
研究実績の概要 |
ビタミンB2であるリボフラビンを前駆体とするFADやFMNは、生物のあらゆる生理機能の根幹に関わる補酵素であるため、細胞内レベルは恒常的に維持されている。植物においてリボフラビンは葉緑体のみで合成され、各オルガネラに輸送された後にFADやFMNが合成される。また、それらフラビン化合物の分解系も複数存在している。しかし、その合成/分解系制御の分子機構やオルガネラ間の輸送機構については全く不明である。そこで我々は、シロイヌナズナにおけるフラビン化合物レベルの恒常性維持に関わる新規因子を同定するために、トランスクリプトーム解析により細胞内FADレベル変化に応答して発現変動する転写因子および輸送体をコードする遺伝子をそれぞれ47個、17個同定した。47個の転写因子をコードする遺伝子のうち、24種類の遺伝子破壊株を単離し、得られた遺伝子破壊株の細胞内フラビン化合物レベルについてLC-MS/MSを用いて解析した。その結果、24種類の遺伝子破壊株のうち、1つの遺伝子破壊株におけるフラビン化合物レベルは、野生株と比較して著しく減少していた。さらに本転写因子を一過的に過剰発現させると、その発現上昇に伴って、細胞フラビン量も増加した。したがって、今回同定した転写因子は植物におけるフラビン化合物レベルの調節に関与する新規の転写因子である可能性が強く示唆された。一方、17個の輸送体関連遺伝子とその類似遺伝子群について、RF生合成遺伝子を欠損したRF要求性酵母を用いた相補試験を行なった。RF要求性酵母は外部から高濃度のフラビン化合物を添加しなければ生育できないが、輸送体関連遺伝子に含まれていた遺伝子の類似遺伝子群を導入した複数のRF要求性酵母は、低濃度のRF添加培地でも生育可能であった。したがって、これらの輸送体候補遺伝子には植物のフラビン化合物輸送体が含まれていることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フラビン化合物輸送体の同定と生理機能解析 FAD処理後のシロイヌナズナ葉におけるトランスクリプトーム解析により同定した17個の輸送体関連遺伝子(FAD-responsive transporters: FRTPs)について、酵母のRF要求株を作製し、FRTPsおよびそのホモログなどの候補遺伝子を発現させ、低濃度のフラビン化合物を含む培地でスポットアッセイを行った。その結果、FRTP遺伝子群を導入した株で顕著に生育が回復した株は得られなかった。一方、FRTPsに含まれていたPurine permease (PUP)にも注目し、シロイヌナズナの21種類のPUPについても同様のスポットアッセイを行なった結果、複数のPUP導入株が低濃度RF添加培地において生育可能であったことから、いくつかのPUPが植物のフラビン化合物輸送に関与することが示唆された。 フラビン応答性転写因子 (FRTFs)がフラビン化合物代謝系制御に果たす役割 FRTFsとフラビン代謝系の制御との関連性を明らかにするために、各FRTFのシロイヌナズナ遺伝子破壊株を単離した。これら遺伝子破壊株のフラビン化合物量を定量した結果、24種類の遺伝子破壊株のうち、KO-frtf19株の細胞内フラビン化合物レベルは野生株と比較して顕著に減少していた。さらに、既知のフラビン合成系遺伝子の発現量を解析した結果、野生株と比較してKO-frtf19株ではAtRibA1、PyrR、PyrDおよびCOS1の発現量が顕著に低下していた。さらに、FRTF19の一過的過剰発現株を用いて解析を行った結果、FRTF19の発現量の増加に伴って、既知のフラビン合成系遺伝子の発現量および細胞内フラビン化合物レベルの増加が認められた。したがって、FRTF19が植物細胞内フラビン化合物レベルの調節に関与する新規転写因子であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
現段階では大きな遅れもなく、研究計画通りに進捗している。したがって、今後は当初の予定通り以下のように研究を進めていく。 フラビン化合物輸送体の同定と生理機能解析 これまでに酵母を用いたスポットアッセイにより同定した複数のフラビン輸送体候補遺伝子(PUPs)の生理機能の解析を進める。蛍光タンパク質を用いた細胞内局在性の解析、プロモーターGUSを用いた組織特異的発現の解析、遺伝子破壊株の単離、過剰発現株の作出を進める。さらに、培養細胞系を用いたフラビン輸送活性の評価系の確立を試みる。 フラビン応答性転写因子 (FRTF)がフラビン化合物代謝系制御に果たす役割 新規候補遺伝子であるFRTF19の破壊株に加え、過剰発現株の作出を進める。作出した遺伝子破壊株や過剰発現株を用いてトランスクリプトーム解析を行い、発現変動している遺伝子の探索を行い、FRTF19の下流遺伝子の探索を進める。また、FRTF19はストレス応答性を示すことから、遺伝子破壊株、過剰発現株を用いて、種々のストレス応答と細胞内フラビン化合物レベルとの関連性について詳細に解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により当初参加を予定していた学会等がすべて中止となり、出張旅費が不要となったため差額が生じた。次年度の消耗品費、旅費として使用を予定している。
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