研究課題/領域番号 |
18K05440
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
河田 美幸 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (10454498)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランスポーター / 液胞 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
本年度は、出芽酵母Ypq2について細胞膜局在型変異体の作製を試みた。哺乳類PQLC2のリソソーム局在シグナル(ジロイシンモチーフ)の類似配列をアラニンに変異させたGFP-Ypq2(LA)を作製し、細胞内局在を調べた結果、液胞膜局在が不完全になったことから、Ypq2のジロイシンモチーフが液胞膜局在に関与することが示唆された。同時に、Ypq2によるアミノ酸輸送メカニズム解明を目指し、単離液胞膜小胞を用いた輸送活性の反応速度論的解析を進めた。その結果、Ypq2によるアミノ酸輸送において、PQモチーフ中のPro残基が活性に必須のアミノ酸残基であることを明らかにした。 3種類の液胞PQループタンパク質が存在する出芽酵母に対して、分裂酵母では液胞PQループタンパク質をコードする遺伝子は1種類のみである。該当タンパク質は細胞膜局在のGPCRであると報告されているが、Ypq1~3とのアミノ酸配列の相同性および系統樹解析から、分裂酵母のPQループタンパク質も同様に液胞アミノ酸輸送トランスポーターである可能性が考えられた。そこで本遺伝子をGFP融合型として出芽酵母および分裂酵母に発現させたところ、いずれの場合も液胞膜に局在することを見出した。また、出芽酵母に過剰発現させると液胞塩基性アミノ酸含量が大きく変動し、単離液胞膜小胞を用いた輸送活性測定により有意なアミノ酸輸送活性が検出された。これらの結果は、分裂酵母の液胞PQループタンパク質がアミノ酸輸送に関わることを示唆する。以上の成果について4件の学会報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵母液胞膜に局在するPQループタンパク質の精製法確立に向け、細胞膜局在型Ypq2変異体の作製を試みた。哺乳動物細胞におけるリソソーム局在化シグナルの変異により、ドット状構造への局在が一部観察され、液胞膜局在が不完全になることが明らかとなった。但し細胞膜局在型Ypq2発現株の構築には至っていないため、現在大腸菌・酵母・昆虫細胞を用いた発現系構築を同時進行中であり、大腸菌/昆虫細胞発現系では過剰発現可能であることを確認している。 Ypq2のアミノ酸輸送メカニズム解明に向けて、単離液胞膜小胞を用いた輸送活性の解析を進め、Ypq2が液胞膜を介したアミノ酸輸送に関与し、PQモチーフ中のPro残基が輸送活性に必須のアミノ酸残基であることを示した。以上の成果については現在論文投稿中である。 また、液胞PQループタンパク質の生理機能解明に向け、分裂酵母液胞PQループタンパク質の遺伝子破壊株を作製し、遺伝子破壊により液胞内アミノ酸含量が大きく変動することを明らかにした。また、過剰発現株の単離液胞膜小胞を用いた輸送活性測定により、有意なアミノ酸輸送活性を検出している。これらの結果は分裂酵母液胞PQループタンパク質がアミノ酸トランスポーターであることを強く示唆するものであり、分裂酵母を用いた今後の機能解析において基盤となる結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ジロイシンモチーフ様配列への変異導入によりYpq2の液胞膜局在が不完全となることを見出したので、液胞膜へのタンパク質輸送に関わるCPY/ALP経路の遺伝子破壊株に発現させ、細胞膜局在型YPQ2発現株の単離を試みる。一方で目的酵母株の獲得が困難な場合を想定し、大腸菌および昆虫細胞による発現系を構築中である。精製Ypq2を用いたプロテオリポソーム活性測定系により生化学的解析を行い、基質特異性/親和性やエネルギー共役の有無等、基質輸送を特徴づける速度論的パラメーターを取得することにより、Ypq2によるアミノ酸輸送メカニズムの解明を目指す。 同時に、PQループタンパク質の生理機能解明に向け、分裂酵母遺伝子破壊株を用いた液胞内アミノ酸含量測定、胞子形成能評価、栄養飢餓、浸透圧や塩濃度などの各種ストレス耐性試験等により、PQループタンパク質遺伝子破壊株の表現型を明らかにする。この結果をもとに、過剰発現ライブラリーを利用して表現型を相補する遺伝子を探索し、PQループタンパク質の活性調節因子/相互作用因子等を同定する。 以上、精製トランスポータータンパク質を用いた輸送活性測定によるアミノ酸輸送機構の解明と、分裂酵母遺伝子破壊株を利用したPQループタンパク質の生理機能解明により、液胞アミノ酸コンパートメントのダイナミクスにおけるPQループタンパク質の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の納入が年度内に間に合わなかったため。 4月に納品され、既に使用を開始しているため、計画に大きな変更は無い。
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