研究課題
本年度はまず、分裂酵母唯一の液胞PQループタンパク質候補遺伝子であるstm1+に着目し、PQループタンパク質の生理機能解析を進めた。出芽酵母Ypqタンパク質とのアミノ酸配列相同性を基にした解析から、分裂酵母stm1+遺伝子が液胞アミノ酸トランスポーターをコードする可能性が示された。当該遺伝子産物については細胞膜局在のGPCRと報告されていたが、GFP融合型として発現させた本遺伝子産物は液胞膜に局在した。遺伝子破壊株と過剰発現株について液胞内アミノ酸を定量した結果、分裂酵母液胞における塩基性アミノ酸蓄積レベルがstm1+発現に依存して変動することが示された。さらに、出芽酵母発現株由来の単離液胞膜小胞を用いた輸送活性測定により、有意な塩基性アミノ酸輸送活性を検出した。以上の結果から、分裂酵母液胞PQループタンパク質Stm1が液胞膜を介したアミノ酸輸送に関わることを明らかにした。しかし本遺伝子の単一破壊株では、窒素飢餓などの各種ストレス耐性試験において顕著な表現形が見出せなかった。液胞からのアミノ酸排出を行うSpAvt3などがStm1と重複して機能することが原因として考えられたため、これらトランスポーターの多重破壊株を作製し、解析を進める予定である。上記の研究を進める中で、出芽酵母液胞への塩基性アミノ酸蓄積に未同定のトランスポーターが寄与している可能性が示された。GFP融合型トランスポーター候補タンパク質の網羅的局在解析と液胞アミノ酸含量測定により、新規液胞膜タンパク質であるYgr125w/Vsb1が、塩基性アミノ酸蓄積に関わる主要タンパク質であることを発見した。以上、分裂酵母PQループタンパク質の液胞アミノ酸輸送への寄与を示すとともに、出芽酵母の新規液胞膜タンパク質Ygr125w / Vsb1の塩基性アミノ酸蓄積における重要性を明らかにした。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Biomembranes
巻: 1863 ページ: 183507~183507
10.1016/j.bbamem.2020.183507
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 85 ページ: 587~599
10.1093/bbb/zbaa041
巻: 85 ページ: 1157~1164
10.1093/bbb/zbab015