研究課題/領域番号 |
18K05441
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
秋田 充 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (50335890)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛋白質輸送 / 葉緑体 / 前駆体蛋白質 / 立体障害 |
研究実績の概要 |
蛋白質は、翻訳後、適材適所に配置されることで、生命活動を支える。したがって、生体膜を介した蛋白質の輸送は蛋白質の適材適所にとって極めて重要な過程である。 植物の代謝の中心である葉緑体では、葉緑体蛋白質の大部分は、サイトゾルで前駆体蛋白質として翻訳され、葉緑体を囲む二重の包膜に存在する蛋白質輸送装置(トランスロコン)を利用して、独自のシステムにより葉緑体内に輸送される。しかし、その分子機構については未解明な点が多い。 本研究では、葉緑体への蛋白質輸送の解明を以下のストラテジーで行う。単離葉緑体を用いたin vitro蛋白質輸送実験に際し、立体障害を導入した前駆体蛋白質を用いることで、トランスロコンに前駆体蛋白質が捕捉された膜透過中間体を形成させる。中間体における前駆体蛋白質とトランスロコン構成因子との間の分子間相互作用の解析により、中間体を構成する因子を同定する。 当該年度は、立体障害の検討を行った。自発的にイソペプチド結合を形成するSpyCatcher(SpyC)とSpyTag(SpyT)を成熟体部分に導入したリコンビナント前駆体蛋白質を大腸菌で過剰発現することで、大きなループを形成させた。また、ビオチン化タグ(BAP)を連結したリコンビナント前駆体蛋白質にストレプトアビジンを結合させた。これらの前駆体蛋白質を用いて、in vitro葉緑体蛋白質輸送実験を行ったところ、いずれの前駆体蛋白質も、輸送速度が低下したものの、葉緑体内に輸送され、膜透過中間体を形成させることはできなかった。特に、ストレプトアビジンを結合させた前駆体蛋白質は、輸送の際、ストレプトアビジンが前駆体蛋白質より解離しており、葉緑体内に蛋白質を引き込む力が強力であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ビオチン化前駆体蛋白質は、前駆体蛋白質の精製にとって有効であることが確認できた一方で、実験計画当初は、想定していなかった、以下の2つの実験結果が得られた。1.SpyC-SpyT間イソペプチド結合による、大きなループを前駆体蛋白質に導入したにもかかわらず、前駆体蛋白質は、葉緑体に輸送された。2.ビオチン-ストレプトアビジン間の分子間力は、非常に強力であるにもかかわらず、前駆体蛋白質より、ストレプトアビジンが解離し、その結果、前駆体蛋白質の輸送が観察された。当該研究は、トランスロコンに前駆体蛋白質が捕捉された膜透過中間体を形成させることが、一つの柱となっているため、やや遅れているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に得られた実験結果を踏まえて、前駆体蛋白質の改良を加えることで、膜透過中間体の形成を可能とする立体障害を前駆体蛋白質に導入する。具体的には、前駆体蛋白質に導入したSpyCとSpyTの間にポリペプチドを挿入することでループを大きくしたり、前駆体蛋白質のC末端側にストレプトアビジン単量体を連結し、ストレプトアビジン単量体とストレプトアビジン4量体を再構成することで、ストレプトアビジン-ビオチン間の分子間力によらず、ストレプトアビジン4量体を立体障害として適用する。 また、ビオチン化前駆体蛋白質の精製が良好であったことから、in vitro葉緑体蛋白質輸送実験の際、低エネルギー条件下で観察される初期膜透過中間体をビオチン化前駆体蛋白質を用いて形成させ、界面活性剤で可溶化した初期膜透過中間体をビオチンを指標に単離し、初期膜透過中間体中で前駆体蛋白質と相互作用しているトランスロコン因子の同定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、使用額の残金が100円未満であることが判明したので、最終調整を行わなかったため。
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