研究課題/領域番号 |
18K05442
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石野 園子 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80399740)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA修復 / 遺伝子破壊 |
研究実績の概要 |
T. kodakarensis細胞の変異率について6メチルプリン耐性を利用し、みかけの変異率を数値化することが当初の計画であったが、より正確に定量し変異スペクトルの解析までできるように次世代シークエンシング(NGS)の利用に取り組んだ。NGSに供する試料について、継代をどのくらいの数おこなえば、統計的に有意なデータが得られるのかは、それぞれの破壊された遺伝子による。データ取得と並行して、継代数の条件検討をおこなった。またシングルコロニーを慎重に単離して継代したが、配列解析の結果ではコンタミネーションが多く生じていたので、プロトコル、作業手順の改良を行った。 EndoMSタンパク質の修復経路の解明について、T. kodakarensis 由来Mre11-Rad50、HerA-NurAの組換えタンパク質を、それぞれ複合体として高純度で作製できるようになった。蛍光標識したオリゴヌクレオチドで様々な構造の基質を作製して切断反応を詳細に解析した。その結果より、Mre11-Rad50複合体およびHerA-NurA複合体はそれぞれ安定に働いて、EndoMS切断後を模した5’端が突出した二本鎖切断末端を、組換え修復経路に導くための3’端突出に加工することができることが示唆された。 EndoVとEndoQそれぞれが、脱アミノ化塩基損傷を含むDNAに対して切断した後、PolBが伸長合成して修復を完了させるモデルにもとづいた、in vitroにおける再構成実験に成功した。 EndoMSの修復経路の相互作用因子探索について、候補の一つである精製した組換えタンパク質OGG1がEndoMSと相互作用することをSPR解析で見出した。またそれぞれの切断反応には互いに影響しないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた表現型による見かけの変異率測定よりも、次世代シークエンシング(NGS)をおこなう方針にしたことで、統計的に有意な変異蓄積のデータ、および変異スペクトルについて詳細な情報が得られることになり、DNA修復に働く遺伝子についてより詳細に解析できる見通しが立った。この方法には供する試料の作製方法が重要なポイントであった。情報収集をおこない、真正細菌で成功した論文著者に技術指導を受けて、超好熱性アーキアを用いた合理的で実用的な継代培養方法のプロトコルを確立することに成功した。 DNA修復関連の組換えタンパク質の調製が安定して実施できるようになり、種々の解析に向けて十分な質、量の試料を供給できる見通しができた。またin vivoの解析に必要な、EndoMS、Mre11、Rad50、HerA、NurA、OGG1のポリクローナル抗体を作製したので、in vivoの解析を発展させることができる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続きNGSで、遺伝子破壊株の変異の解析を続ける。種々のタンパク質の抗体が準備できたので、in vivoにおける相互作用解析をおこなう。ゲノム上のタンパク質にHisタグを付加して、細胞抽出液から天然の複合体を調製したり、抗体カラムを用いて複合体の取得を検討したい。 ただし、コロナウイルスの感染予防のため、実験の実施量が減少すると予想される。バイオインフォマティクスで、DNA修復に関連する遺伝子群について、アーキアにおける保存、および進化系統解析をおこない、機能の予測や同一経路に働く遺伝子の予想ができないか試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染予防のため、予定していた会議の参加および研究打ち合わせを取り消した。また、培養とDNA取得実験の一部を停止したため生じた差額を次年度に繰り越した。次年度では培養と次世代シークエンスの実施を計画しており、繰り越した次年度使用額を、培地、ガス、プラスチック消耗品類、試薬類の購入と旅費に充てる予定である。
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