研究実績の概要 |
内分泌細胞で、ペプチドホルモンや多くの生理活性ペプチドは、まず分子量の大きな前駆体として粗面小胞体で合成され、トランスゴルジネットワーク(TGN)まで輸送される過程で、順次、シグナルペプチドの除去、S-S結合の形成、糖鎖付加などの修飾を受ける。その後、分泌顆粒に選択的に輸送されたホルモン前駆体(プロホルモン)は、顆粒中でプロセッシング酵素群(PC1/3, PC2, CPE)による修飾を受け、活性を持つ成熟型ホルモンとなり貯蔵される。その後、活性型ホルモンは細胞外の刺激に応じて細胞外に分泌される。 生体は肺で大気(21%酸素濃度=160 mmHg 酸素分圧)を吸い、肺胞でヘモグロビンを介して血中に酸素を取り込む。取り込まれた酸素は血流で全身の細胞に分配され、組織中の酸素濃度では 3.6-12.8%と報告されている。最近、申請者は、脳下垂体と膵島由来の内分泌細胞株を10%酸素濃度下(通常培養は21%酸素濃度)で培養したところ、1)成熟型ホルモンの分泌が亢進する、2)PC1/3, PC2, CPEの発現が増強し、3)顆粒タンパク質とホルモン前駆体のプロセッシングが亢進する、と云った新知見を得た(Biochemical J 2019;476.827-842)。 令和2年度は10, 21%酸素濃度で培養したマウス下垂体由来AtT-20細胞、マウス膵島由来MIN6細胞からRNAを抽出し、10%酸素培養で発現が増強する遺伝子をマイクロアレイで調べ、RT-PCR、ウエスタンブロット法で検証し、候補タンパク質(主に転写調節因子)を生化学的に解析した。さらにホルモン分泌時の酸素分圧の変化を調べるために低酸素発光プローブ(イリジウム錯体)で内分泌組織/細胞株のイメージングを試みた。
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