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2018 年度 実施状況報告書

生体認識配糖体生産のための特異的糖鎖遊離酵素の構造解析とその機能開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K05444
研究機関大阪市立大学

研究代表者

伊藤 和央  大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20183171)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード糖タンパク質 / エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ / エンド HS
研究実績の概要

大腸菌におけるエンドHS遺伝子の発現系で遺伝子組換エンドHSを発現し、菌体ライゼートから硫安分画の後、疎水、イオン交換およびゲルろ過の各種カラムクロマトグラフィーによって遺伝子組換エンドHSを精製した。精製エンドHS標品は電気泳動において単一であった。こうして、100 mg以上の精製エンドHS標品を得た。精製エンドHS標品を濃縮し、結晶化に供した。
各種結晶化スクリーニングキットを用いてハンギングドロップによる蒸気拡散法で20℃においてエンドHSの結晶化条件を検討した。その結果、3種類の条件において結晶が生成した。得られた条件をもとに、沈澱剤組成・濃度、添加剤あるいは酵素濃度条件を検討し、最適な結晶化条件を特定した。得られた結晶は薄板状結晶であった。
得られたエンドHSの結晶について、つくば高エネルギー加速器研究機構においてX線結晶回析の測定を行った。測定は、Rigaku FR-Xで行った。測定条件は、検出器R-AXIS VII、波長1.5418(CuKα) オングストローム、カメラ長120 mm、露光時間 60 sec/image、振動角0.50°で合計360枚のイメージデータを収集した。データ処理は、HKL2000で行った。その結果、空間群がP 2、格子定数がa =75.3 オングストローム、b =72.2 オングストローム、c =216.1オングストローム、β=98.0°と決定して、3.0 オングストローム分解能でフルデータを収集することができた。このため、本結晶はX結晶回析から立体構造を解くために適したものであった。
次いで、得られたデータをもとに分子置換法による立体構造の決定を試みたが、分子置換に利用できる既存タンパク質の立体構造データがなかった。そこで、重原子置換法による位相の決定を行うために、得られた結晶を用いて重原子置換のための最適化条件の検討を行うことにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

X線結晶回析のためのエンドHSの結晶を調製することができ、構造解析に必要なデータを得ることができた。しかし、分子置換法による立体構造決定ができなかった。このため、エンドHSは新規な立体構造を有する酵素であるものと考えられた。分子置換法ではの立体構造の決定までには至らなかったため、位相を決定するために重原子置換法を検討することにしたが、X線結晶構造解析に利用できる結晶の調製には至っていない。
また、セレノメチオニン化したエンドHSの発現とその結晶化を通じて、X線結晶解析を進めることにした。

今後の研究の推進方策

得られた結晶を用いて重原子置換を行い、そのX線回折データをもとに位相を決定し、エンドHSの立体構造を明らかにする。
また、大腸菌でのエンドHS遺伝子の発現の際、セレノメチオニン存在下での培養を行い、セレノメチオニンを導入した遺伝子組換エンドHSを発現し、これを精製する。そして、セレノメチオニン化エンドHSの結晶化条件を検討し、得られた条件下で調製したセレノメチオニン化エンドHSの結晶のX線結晶解析を行い、位相と合わせて構造解析データを収集し、エンドHSの立体構造を明らかにする。
さらに、糖タンパク質から調製したアスパラギン結合型糖鎖とエンドHSの共結晶を調製し、そのX線結晶構造解析を行い、エンドHSの糖鎖認識および水分子認識に関わる構造上の特徴を解明し、エンドHSの加水分解・糖鎖転移に関与する部位および糖鎖認識・結合部位を特定する。
これらの知見をもとに、遺伝子改変によって糖鎖転移合成型酵素を作成し、その生体認識配糖体合成効率を検証する。また、糖鎖認識改変型酵素の作成と各種生物起源糖タンパク質糖鎖の転移導入と糖鎖転移合成型酵素によるバイオ医薬品糖鎖のリモデリングの可能性を検証する。
さらに、各種アミノ酸修飾試薬を用いてエンドHSの機能および構造に重要な役割を果たすアミノ酸残基を特定し、その改変を通じて糖鎖の加水分解・転移機構を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

結晶化試薬の量が当初予定よりも少なかったため、これにかかる経費が少なくなったため、次年度使用額が生じた。これは、次年度、位相決定のための研究用物品経費に充てる予定である。特に、セレノメチオニン化エンドHSの調製、精製と結晶条件の検討に必要な物品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件)

  • [学会発表] Prevotella属菌群の産生する糖タンパク質糖鎖遊離酵素の特異性と宿主糖タンパク質糖鎖遊離・分解酵素系の存在2019

    • 著者名/発表者名
      森 真司、竹内朋史、高谷尚弥、伊藤和央
    • 学会等名
      2019年日本農芸化学会大会
  • [学会発表] Prevotella 属菌群における糖タンパク質糖鎖遊離酵素の特異性と宿主糖タンパク質糖鎖遊離・分解酵素系の存在2018

    • 著者名/発表者名
      竹内 朋史、高谷 尚弥、森 真司、伊藤 和央
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] Engineering and improvement of carbohydrate-modifying enzymes for synthesis of functional oligosaccharides2018

    • 著者名/発表者名
      Jarunee Kaulpiboon, Prakarn Rudeekulthamrong, Kuakarun Krusong, Kamontip Kuttiyawong, Santhana Nakapong, Shuichiro Murakami, Kazuo Ito and Piamsook Pongsawasdi
    • 学会等名
      The Final Joint Seminar of CCP
    • 国際学会
  • [学会発表] Application of endoglycosidases responsible for the release of N-glycans from the glycoproteins in basidiomycetes and posttranslational processing of the enzymes by a novel protease,2018

    • 著者名/発表者名
      Kazuo Ito, Piamsook Pongsawasdi, Jarunee Kaulpiboon, Kuakarun Krusong,Santhana Nakapong,Kamontip Kuttiyawongand Prakarn Rudeekulthamrong
    • 学会等名
      The Final Joint Seminar of CCP
    • 国際学会
  • [学会発表] Preparation, characterization and release study of astaxanthin encapsulated-levan nanoparticles2018

    • 著者名/発表者名
      Kamontip Kuttiyawong, Santhana Nakapong, Kuakarun Krusong, Jarunee Kaulpiboon, Prakarn Rudeekulthamrong, Shuichiro Murakami, Kazuo Ito and Piamsook Pongsawasdi,
    • 学会等名
      The Final Joint Seminar of CCP
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular and Biochemical characterizations of Levanase from Bacillus amyloliquefaciens2018

    • 著者名/発表者名
      Santhana Nakapong, Kamoltip Kuttiyawong, Kazuo Ito and Piamsook Pongsawasdi
    • 学会等名
      The Final Joint Seminar of CCP
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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