研究課題
昨年度の研究で得られたアスパラギン結合型糖鎖遊離酵素エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼHS(エンドHS)のX線結晶回析データをもとに、エンドHSの立体構造の精密化を行い、立体構造を解明した。その結果、エンドHSは異なる5つのドメインから構成されていることを明らかにした。また、我々が発見したPrevotella melaninogenica の産生するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼPM(エンドPM)の3つのアイソザイムのうち、エンドPMα遺伝子の発現系を構築し、遺伝子組換えエンドPMαを発現し、菌体ライゼートから各種カラムクロマトグラフィーによって遺伝子組換えエンドPMαを精製した。精製酵素標品はSDS-PAGEにおいて単一であった。このようにして150mg以上の精製遺伝子組換えエンドPMα標品を調製し、結晶化の条件検討に供した。各種結晶化スクリーニングキットを利用して、ハンギングドロップによる蒸気拡散法によって、20℃において結晶化条件を検討した。その結果、重層した薄板結晶の生成条件を見出し、最適条件を特定して板状の単結晶を得た。得られたエンドPMαの結晶について、つくば高エネルギー加速器研究機構においてX線結晶回析測定を行った。測定はPF-BL17Aで行った。測定条件は、検出器ELGER X16M、波長0.98オングストローム、カメラ長288㎜、振動角0.5°でイメージデータを収集した。データ処理はXDSを使用した。その結果、空間群がP212121、格子定数がa=72.6オングストローム、b=128オングストローム、c=238オングストロームと決定し、2.1オングストローム分解能でフルデータを収集した。本結晶はX線結晶回析から立体構造を解くために適したものであった。現在、得られたデータをもとに立体構造の精密化を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、コロナ禍のため研究施設の利用が制限され、予定していた研究をすべて行うことができなかった。しかし、昨年度の研究によって得られたエンドHSのX線結晶回析データをもとに、本年度はエンドHSの立体構造の精密化を行い、エンドHSの立体構造を解くことができた。その結果、エンドHSは5つの異なるドメインから構成されていることを明らかにすることができた。また、我々が発見したPrevotella melaninogenica の産生するアスパラギン結合型糖鎖遊離酵素エンドPMの3つのアイソザイムのうち、エンドPMαの単結晶を調製することができた。 これを用いて、X線結晶構造解析を行い、2.1オングストローム分解能でフルデータを収集することができた。
エンドHSの各ドメイン欠失変異体を作成し、これらの発現系を構築し、ドメイン欠失変異エンドHSの機能解析を通じて、各ドメインの機能を明らかにする。エンドHSと基質糖鎖の共結晶生成条件を検討し、酵素・基質複合体の結晶を調製する。得られた酵素・基質複合体のX線結晶構造解析を行い、エンドHSの糖鎖認識・結合部位と触媒部位を特定する。こうして、エンドHSの糖鎖認識および水分子認識に関わる構造上の特徴を解明し、エンドHSの触媒部位、糖鎖認識・結合部位および加水分解・糖鎖転移部位を特定する。これらの知見をもとに、遺伝子改変によって糖鎖転移合成型酵素を作成し、生体認識配糖体合成率を検証する。また、合成した生体認識配糖体の構造と機能を解析する。さらに、糖鎖認識改変型酵素の作成と各種生物期限糖タンパク質糖鎖の転移導入と糖鎖転移合成他酵素によるバイオ医薬品糖鎖のリモデリングを検証する。また、Prevotella melaninogenica の産生するエンドPMαの立体構造の精密化を行い、立体構造を明らかにする。さらに、エンドPMαを用いた生体認識配糖体の合成と得られた生体認識配糖体の構造および機能解析を行う。
今年度はコロナ禍による研究施設への入構が制限されたため、予定していた研究が十分に行えず、予定していた試薬や実験器具の量が少なく、これに関わる経費が少なかったため。これは、次年度にエンドHSにおける酵素・基質複合体の調製とそのX線結晶構造解析のために経費に充てる。また、エンドHSの各ドメインの機能解析のために必要な物品の購入に充てる。さらに、エンドHSのドメインを改変し、糖鎖転移合成酵素に改変るための研究経費に充てる。また、エンドHSおよび糖鎖転移合成酵素に改変したエンドHSを用いた生体認識配糖体の合成とその構造解析のための物品の購入に充てる。さらに、エンドPMαの立体構造の精密化とエンドPMαを用いた生体認識配糖体の合成とその構造解析のための物品の購入に充てる。
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Biomolecules
巻: 10 ページ: 692-703
10.3390/biom10050692