研究課題/領域番号 |
18K05445
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
田中 俊一 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70591387)
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研究分担者 |
松村 浩由 立命館大学, 生命科学部, 教授 (30324809)
吉澤 拓也 立命館大学, 生命科学部, 助教 (50779056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工結合タンパク質 / 進化分子工学 / 酵素 / タンパク質工学 / 基質特異性 |
研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らの開発した独自技術『Enzyme Engineering by Proxy(酵素の活性中心付近に結合するアクセサリータンパク質を人工的に創り出し、その結合を介して触媒機能を改変する技術)』の応用可能性を探ることを目的に、①アクセサリータンパク質が酵素の触媒機能を改変するメカニズムの解明と、②基質と触媒機構が異なる複数の酵素を対象とした網羅的検証実験に取り組む。
本年度はまず、①として、すでに基質特異性の改変が実証されているBacillus circulans由来ベータガラクトシダーゼ(BcBgaDD)とアクセサリータンパク質(BcBgaDD_MbL23)について、複合体精製蛋白質の調製と結晶化、ならびに結晶構造解析を行った。その結果、BcBgaDDとBcBgaDD_MbL23の二者複合体について2.6Å分解能、さらに基質である3糖オリゴ糖を導入した三者複合体について2.4Å分解能でX線回折データを取得することに成功した。分子置換法によって位相も決定でき、現在構造精密化途中ではあるものの、BcBgaDD_MbL23がBcBgaDDの基質特異性をどのように改変しているのか、その手がかりが得られつつある。
また②として、BcBgaDDとは基質と活性中心構造が大きく異なるCandida cylindracea由来リパーゼ(CcLip1)を対象に、アクセサリータンパク質の結合によって基質特異性の改変ができるのかどうかを検証した。その結果、野生型酵素は短鎖から長鎖まで幅広い長さの脂肪基質に作用するが、アクセサリータンパク質(CcLip1_MbL18)を結合させることで、その基質特異性を短鎖側へ大きくシフトできることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①については当初の計画通り、Bacillus circulans由来ベータガラクトシダーゼ(BcBgaDD)とアクセサリータンパク質(BcBgaDD_MbL23)の複合体の結晶化と、X線回折データを取得することができた。その立体構造は決定間近であり、BcBgaDD_MbL23がBcBgaDDの基質特異性を改変するメカニズムが明らかになりつつある。
②についても計画通り、BcBgaDDとは基質と活性中心構造が大きく異なるCandida cylindracea由来リパーゼ(CcLip1)を対象とした検証を実施し、アクセサリータンパク質(CcLip1_MbL18)の結合によって基質特異性の改変ができることを実証した。
以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
①については、BcBgaDDとBcBgaDD_MbL23の複合体構造の精密化を完了し、BcBgaDD_MbL23がBcBgaDDの基質特異性を改変するメカニズムを明らかにする。さらに、立体構造情報に基づいた変異実験結果等も合わせて、国際誌への成果発表を行う予定である。また、今年度に基質特異性の改変が実証できたCcLip1とCcLip1_MbL18について、その基質特異性改変メカニズムを明らかにするために、結晶構造解析を実施する予定である。
②については、BcBgaDDとCcLip1とはさらに基質と活性中心構造の異なる、大腸菌由来ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(EcPEPC)を対象に、触媒機能改変を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該金額(41,196円)を使用する必要がなく、順調に実験を進めることができたため。当該金額については、来年度の物品費(主に実験用試薬購入費)として使用させていただきたい。
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