研究課題/領域番号 |
18K05446
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉田 浩二 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (60230736)
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研究分担者 |
萩原 智 近畿大学, 医学部, 講師 (40460852)
杉岡 孝二 近畿大学, 大学病院, 准教授 (50399119)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エピガロカテキンガレート / 角膜線維芽細胞 / 角膜潰瘍 / uPA |
研究実績の概要 |
炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-1は角膜潰瘍の病態に関与している。 また、IL-1は三次元コラーゲンゲル内で培養された角膜線維芽細胞によるコラーゲン分解を促進する。緑茶成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)は、生体に有益なさまざまな生理活性を有することが報告されている。EGCGの角膜潰瘍の治療薬としての可能性を探るためにコラーゲンゲル内で培養した角膜線維芽細胞によるIL-1β誘導コラーゲン分解に対するEGCGの効果をプロテアーゼ活性の調節に焦点を当てて検討を行った。 (方法)角膜線維芽細胞をコラーゲンゲル内で培養した。ヒトプラスミノーゲンおよびEGCGを含むさまざまな薬剤をコラーゲンゲルの上部に添加し、培養上清中の分解コラーゲン量を測定した。また、EGCGがurokinase-type plasminogen activator(uPA)、 マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-1、リン酸化p65、リン酸化IκB-αの発現に与える影響について検討した。 (結果・考察)EGCGは角膜線維芽細胞によるIL-1β誘導性コラーゲン分解を濃度依存的に阻害した。EGCGは角膜線維芽細胞によるMMP-1の産生には影響を与えなかった。 EGCGはIL-1βによるNF-κBシグナル伝達の活性化を阻害した。EGCGによるコラーゲン分解の阻害作用は、角膜線維芽細胞におけるIL-1β誘導性uPAの産生を抑制することにより生じるものであると推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲンゲル三次元細胞培養モデルの系を用いて、EGCGは角膜線維芽細胞によるコラーゲン分解を阻害することが明らかにし、その機序は、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-1の産生を直接抑制させるのではなく、その上流のurokinase-type plasminogen activator(uPA)の産生を抑制することによってMMP-1の活性化をコントロールしコラーゲン分解を抑制することを明らかにし論文化できたから。
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今後の研究の推進方策 |
EGCGの創傷治癒における役割についてさらに検討を進めてゆく。EGCGによるコラーゲン分解抑制作用メカニズムを明らかにするため、EGCGがNF-κBなどの転写因子活性化を阻害する機序について精査する。また、EGCGによるコラーゲン分解抑制作用にはuPAが関与することが明らかになったので、uPARとの関連についても調べる。緑茶カテキン受容体としては、67kDaラミニンレセプター(67LR)の存在が報告されているので、EGCGのコラーゲン分解阻害に67LRが関与するかについても調査する。EGCGが動物実験モデルにおいて角膜潰瘍の治療薬として実際に有効に働くか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に回す使用額が2,112円生じた。当該年度に予定していた研究に必要な物品はすでに購入済みであり、年度末に、上記の予算残額の範囲で購入可能で、かつ早急に必要とする物品が見当たらなかった。研究費を有効に活用するためには、上記の予算残額を次年度に繰り越し、次年度分とともに使用する方が研究を効率的に推進することができると考えた。従来と同じように、次年度も直接経費は実験試薬・消耗品をはじめとする物品の購入にあてる予定である。
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