(1)新規ペプチドエピメラーゼMurLの反応機構の解析:MurLはエピメリ化反応に一当量のATPを補基質を用いる新規な酵素である。昨年度までに、推定した反応機構から予想された反応中間体をLC-MSとNMR実験で検出できていた。今年度は、更なる反応機構解析のため、基質類縁体を有機化学的手法と酵素反応を用いた方法で合成した。また、得られた化合物と組換えMurLを用いた酵素反応について検討し、当初推定していた反応機構が正しいことが示唆された。 (2)MurL/MurD2阻害剤の探索:MurL/MurD2はザントモナス属細菌など一部の植物病原菌のみが利用するペプチドグリカン新規生合成経路であることから、これらの阻害剤はこれらの植物病原菌特異的な抗菌剤となる。昨年度までに、放線菌やカビの培養物ライブラリーのスクリーニングと続く活性本体の単離を進めアクチノマイシンDに目的の活性があることを見出していた。今年度は、新たなライブラリーを用いたスクリーニングを行い、目的活性をもつサンプル一つを取得した。 (3)ラッソペプチド天然物MS-271生合成に関わるエピメラーゼの探索:昨年度までに、生産菌Streptomyces sp. M-271のMS-271生合成遺伝子クラスター中の機能未知遺伝子 (mslH) について、大腸菌を宿主にしたin vivo実験や、精製酵素を用いたin vitro実験で、前駆体ペプチドMslAを基質にした立体反転反応の進行が確認できていた。また、本酵素が反応に補酵素を要求しないことを明らかにした。本酵素はペプチドのカルボン酸のアルファー位を補酵素非依存的に立体反転する初の酵素である。今年度は、MslHの変異体の構築と活性測定を行い、活性部位を明らかにした。
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