研究実績の概要 |
根寄生植物の種子発芽刺激物質として単離されたストリゴラクトン(strigolactone, SL)は、アーバスキュラー菌根菌(AM 菌)の共生に必須なシグナル分子であり、さらには植物地上部および地下部の形態形成を制御する植物ホルモンである。最近SLとは構造的に異質で極めてユニークな構造を有する新種ストリゴラクトン群を種々の植物から単離・構造決定し、また多くの植物種に含まれていることを確認した。これらはSL生合成中間体であるcarlactone(CL)の誘導体(carlactone derivatives, CLD)と考えられ、イネを始めコケから被子植物まで多種多様な植物種がCLDを生産している。本研究では、典型的なSLとは構造的に異質な新奇発芽刺激物質CLDの単離・構造解析を中心に、生理機能の解析および生合成経路の解明を行うことにした。 具体的に根寄生植物ヤセウツボ(O.minor)種子に対する発芽刺激活性を指標にCLDの単離を進め、種々の機器分析により構造解析を行い、同時に合成標品とのこれまでに蓄積した各種機器分析データの比較により構造決定を進行する。生理機能については、SLで行われている各種生理試験を適用する。今年度ではまず、様々な植物種を網羅的に調べた結果、ヒメツリガネゴケ、イヌカタヒバ、トウモロコシ、エンバク、イネ、ポプラ、トマト、ヒマワリ、イングリッシュアイビーおよびセタカアワタチソウには、それぞれ少なくとも3種類以上のCLDが生産・分泌することがわかった。また、ミヤゴグサから一つ新奇CLDの単離・構造決定に成功した。
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