昨年度までに代表者らはイネのストリゴラクトン(SL)受容体D14の過剰発現体(OsD14ox)が葉身に疑似病斑を形成し、いもち病への抵抗性が向上していることを見出していた。さらに、d14変異体は野生型イネよりも有意にいもち病菌に対して高感受性を示した。一方、野生株にSLアナログであるGR24を処理すると処理区では抵抗性が上がる傾向があることを見出していた。そこでSLシグナルと病害抵抗性の関係を明らかにすべく、OsD14oxにおいてサリチル酸(SA)マーカー遺伝子、ジャスモン酸(JA)マーカー遺伝子の発現量解析を行った。その結果、D14oxにおいて恒常的なSAシグナルやJAシグナルの亢進は起きていないことが示唆された。さらにRNA-seqを用いて、野生型イネとOsD14ox、d14変異体における遺伝子発現パターンの網羅的解析を行った。その結果、野生型イネ、d14変異体と比較して、OsD14oxにおいて、様々な遺伝子の発現が上昇していることが見いだされた。特に、多数の植物に病原菌耐性を付与する受容体様遺伝子発現が上昇していることや、SAやJAの糖付加酵素の遺伝子発現が上昇していることを見出し、D14過剰発現によるいもち病耐性機構の一端を明らかにした。 最終年度はD14と相互作用する因子とその結合様式について調査した。すでに報告されていたD14と枝分かれ促進因子D53、GAシグナル伝達因子SLR1との相互作用のほか転写因子NF-YC、JAシグナル伝達因子との相互作用も新たに見出した。これら標的タンパク質との相互作用に重要であることが予測されるD14のSL結合ポケット周辺のアミノ酸残基に変異を導入して、標的タンパク質との相互作用を酵母ツーハイブリッド法で評価した。その結果、すべての相互作用を失わせる変異の他に、標的タンパク質特異的に相互作用を失わせるアミノ酸残基も見出した。
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