研究課題
ミトコンドリアADP/ATP輸送体(AAC)は、ミトコンドリア内膜上でADPとATPの交換反応を行う分子質量約30 kDaの膜輸送体であり、マトリックス側で生産されたATPを細胞質へ供給する役割を担っている。ウシ心筋ミトコンドリアAACの新規阻害剤を探索する過程で、epoxycyclohexenedione類(ECH類)がAACによる[14C]ADPの取り込みを阻害することを見出した。また、代表者は高濃度のECH類でSMPを処理した場合、AACの顕著な凝集が誘導されるというユニークな現象を見出した。昨年度までに、ECH類はAAC表面上の3箇所のシステイン(Cys57, Cys160, Cys257)のうち、Cys57を強く修飾することを明らかにした。本年度は、タンパク質修飾剤である4-hydroxynonenal (4HNE)の作用機構について検討した。リノール酸の過酸化分解物4-HNEはその代表例であり、システインなどの求核性アミノ酸残基とマイケル型付加することでタンパク質を化学修飾する。ウシ心筋AACを4-HNEをインキュベートしたところ、4-HNE は 主に Cys160 を修飾していることが強く示唆された。その一方で、4-HNEによる化学修飾は、ECH類とは対照的にAACの凝集(後述)を誘導しなかった。ECH類と同じくシステイン修飾剤でありながら、凝集誘導をしなかった4HNEについては、ECH類の作用機構を考察する上での重要な知見である。
2: おおむね順調に進展している
代表者は、高濃度のECH類でSMPを処理した場合、AACの顕著な凝集が誘導されるというユニークな現象を見出している。ところが、ECH類と同じく、タンパク質のシステイン残基と反応する4HNEではこうした凝集は誘導されなかった。両者の差を明らかにすることが、ユニークなAAC阻害剤であるECH類の作用機構を明らかにする鍵であると考えている。
「現在までの進捗状況」で記載した通り、ユニークなAAC阻害剤であるECH類の作用機構(凝集誘導の仕組み)を明らかにすることが必須であると考えている。
ECH類のプローブ分子の合成が進まず、試薬購入費用として計上していた予算に余剰が生じた。次年度は有機合成を重点的に進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
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