研究課題
ミトコンドリアADP/ATP輸送体 (AAC) は、ミトコンドリア内膜上でADPとATPの交換輸送を行う膜輸送体であり、ミトコンドリアで生産されたATPを細胞質へ供給する役割を担っている。AACは呼吸鎖酵素やATP合成酵素とともに、酸化的リン酸化(ATP合成)の要となる膜輸送体であるため、AACの特異的阻害剤に関する研究は、エネルギー代謝を制御する新規な薬剤の開発研究に資するところが大きい。しかしながら、AACに特異的に作用する阻害剤としてこれまで知られているのは、ボンクレキン酸(BKA)類とカルボキシアトラクトシド(CATR)類の2種類のみであるが、申請者は新たなAAC阻害剤としてエポキシシクロヘキセンジオン(ECHD)類を見出した。本研究では、ECHD類の作用機構研究を通じてAACの構造と機能に関する新たな知見を得ることを目指した。ECHD類はエポキシ基とα,β-不飽和カルボニル基の2箇所の求電子性反応点を持つため、AACの阻害には求核性アミノ酸残基との共有結合形成が関わっている可能性がある。申請者は、ECHD誘導体(AMM-120)を用いたタンパク質化学研究を通して、Cys57が主たる修飾部位であることが強く示唆された。さらに特筆すべき事として、より高濃度(50~100 uM)のECHD類によってAACの顕著な凝集が生じることがわかった。こうした凝集誘導効果は、BKA類やCATR類では認められない極めてユニークな現象である。AAC表面上に存在する3箇所のシステイン残基全てをNEM修飾したところ、ECHD類によるAACの凝集誘導は完全に抑制された。一方、Cys57のみをNEM修飾した場合は凝集誘導が観察されたことから、残り2つのシステイン残基(Cys160とCys257)がECHD類と共有結合を形成し、これがAAC凝集反応のトリガーとなることが示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) 備考 (2件)
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