研究実績の概要 |
確立した立体選択的ジヒドロキシル化を鍵段階とする光学活性アリルアルコール類の合成法を用いて基質一般性についてさらに検討し、様々な基質に本手法が適用可能であることを立証できた。その手法を適用することでアブラナ科植物黒腐病菌に対する抗菌活性を有するpeniciaculin AおよびBの全合成を達成するとともに、hydroxysydonic acidや1,3,5-bisaboratrien-7-olの合成を達成した。hydroxysydonic acidについては天然物の絶対立体配置の決定が曖昧であったが、高い鏡像体純度での合成を通じて確かな物性を測定することができた。1,3,5-bisaboratrien-7-olについてはウコンかの香気成分としての報告があることから、香気特性について評価した結果、両鏡像体間で有意な特性の差が認められることを見いだした。現在それらの結果についてまとめた論文を投稿中である。 一方、amphidinin類の合成研究については、中間体の酵素による光学分割についてさらに検討し、望む立体異性体を95%以上の光学純度で得ることが可能な反応条件を見いだすことができた。その化合物を既知の化合物へと誘導することで、我々の合成した化合物の立体化学が正しいことを証明することができた。また、この結果はamphidinolide Qを含む数種の天然物の形式合成を達成したことにもなっており、開発した手法の有用性を示すものと考えている。 また、酵素反応に関する知見を生かし、zealexin類の合成研究に役立てることができた。
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