研究課題/領域番号 |
18K05469
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鵜沢 浩隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (60356566)
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研究分担者 |
平塚 淳典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (70392652) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖脂質 / 合成 / ガングリオシド / 検知チップ / 相互作用解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、Clostridium botulinumの生産する蛋白性神経毒素(以下、BTXとする)と各種合成糖脂質との相互作用を検証することを目的としている。昨年度までに、Lac-TOA、GT1b-TOAを、各々、固定化した検知チップを用いて、単一分子量 (300kDa)の毒素実剤BTX/Eについて、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)による結合評価を行い、その周波数変化について報告した。本年度は、これまで未検討のGlc-TOA、および、GM1-TOAについて結合評価を行った(TOAはリポ酸を意味する)。 まず、昨年度までに合成した2種類の合成糖脂質Glc-TOA、および、GM1-TOAを、各々、センサ基板の金表面に自己集積化膜(SAM)法により固定化した。同様にして、SAM法により、検知チップのレファレンス側にHOEG6C11SHを固定化した。次に、このようにして作製した糖脂質固定化チップを用い、200ngのBTX/Eを作用させたところ、30MHz QCMにおいて、Glc-TOAでは約3.1Hz、GM1-TOAでは約34Hzの周波数減少が認められた。これまでの結果と合わせると、GM1-TOA>GT1b-TOA>Lac-TOA>Glc-TOAとなり、GM1-TOAが最も大きな周波数減少を示した。これまでの報告において結合しないとされた5糖のGM1に対して、強く結合する結果となった。7糖GT1bではGM1に次ぐ強さで結合し、結合するとした文献を支持した。2糖Lac、単糖Glcについては、弱いながらも結合することが明らかとなり、これまでの文献において報告例のない興味深い新しい知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症のため、2021年5月、同年8月~10月、2022年1月~3月にわたり、リモートワークとなり実験が中断した。作製した糖脂質固定化チップを用いて毒素との相互作用を検証しようと準備していたところ、リモートワークによる実験停止となり、作製したチップを検出評価に用いることができなくなった。糖脂質固定化チップの保存安定性については未検討であり、糖脂質と毒素との結合評価実験においては、freshなチップを用いて評価する必要がある。また、新型コロナ感染症により、本研究で用いる水晶振動子について、製造メーカーの生産ラインが停止し、2022年4月以降にチップの供給が行われる見込みとなり、評価実験に使用するチップが枯渇した。そのため、相互作用検証実験が実施できず、大幅に遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
水晶振動子製造メーカーのチップ供給が再開されしだい、本研究で作製した糖脂質固定化チップを用いて、毒素/擬剤との相互作用解析を早急に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症による実験中断、および、資材の枯渇により、毒素/擬剤を用いた実験に遅れが出ており、1年間の研究期間延長を申請した。次年度においては、本研究で開発した糖脂質ライブラリーを活用し、糖脂質固定化チップの作製、および、毒素/擬剤を用いた相互作用解析を実施する。相互作用解析のための水晶振動子検知チップ、当該チップに合成糖脂質を固定化するための溶媒等の消耗品を購入する。又、合成した糖脂質リガンドはチップ作製に用いるが、消耗して不足となった場合に備え、追加の合成を行うことがある。追加合成のための糖脂質原料、酵素、有機溶媒、カラム精製のための溶媒等の試薬を購入する。又、新型コロナ感染症のため、一時的にメーカーの製造中止となった検知チップの調達を行う。
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