研究課題/領域番号 |
18K05477
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
小林 弘司 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (00610255)
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研究分担者 |
石川 洋哉 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (00325490)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超高速GC / 細菌由来揮発性化合物 / 細菌検査 |
研究実績の概要 |
本研究は,細菌が産生する揮発性化合物 (MVCs) を指標とした食品からの細菌スクリーニング検査法を確立することを目的としている。2019年度までに純粋培養系において細菌の属、種ごとに異なるMVCsをもつことやMVCsを指標とする検査法が牛乳の検査に応用できることを明らかにしている。2020年度はカット野菜を試料として、夾雑菌が大腸菌群や病原性大腸菌の検出に与える影響を検討した。 市販カット野菜にEscherichia coli O157,Escherichia coli NBRC3302を接種し,TSB培地を用いて定常期まで培養した。培養液のMVCsは固相マイクロ抽出法により捕集し,超高速GCに供した.超高速GC分析データを基に主成分分析による解析を行った結果、カット野菜,E.coliで汚染させたカット野菜,E.coliO157で汚染させたカット野菜,それぞれの培養液のMVCsはすべて差別化が可能であった。また,検査に用いたカット野菜がもともと別の大腸菌群細菌に汚染されていた場合でも,それぞれの差別化は可能であった。カット野菜で接種した細菌の検出が可能であったことから, 本検査法は夾雑菌の多い非加熱食品へも応用可能であることが示された。さらに、E. coli O157のMVCsの同定を行った結果,1-オクタノールと2’-アミノアセトフェノン,デカン酸エチルが主成分分析に大きく影響していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度のコロナ禍により、メーカーの対応も遅れたため装置の修理に遅延が生じた。このため計画通りに測定を実施していくことが困難であった。現在は、装置の修理も完了しており、計画に沿って研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までは、細菌培養液の超高速GC分析データを基に主成分分析により、食品を汚染している細菌のスクリーニング検査が可能であることを示してきた。今後は、主成分分析で重要であった各成分の同定をGC-MSを用いて進めていく。例えば、すでにE. coli O157のMVCsの同定を行った結果,1-オクタノール、2’-アミノアセトフェノン、デカン酸エチルを同定している。また、捕集できる揮発性有機化合物は手法により異なることから、細菌検査法の確立には、同一条件での測定結果を蓄積し、繰り返し同定する必要がある。さらに、S. aureusなどE. coli以外の細菌については、超高速GC分析ではマイナーピークであってもMVCの主成分分析では重要な役割を示すMCVsの存在も示唆されている。2021年度は、これらの成分の同定や、より多くの菌種の混合培養液の測定を行うことよって,それぞれの特異的MVCsの解明を進める必要がある。さらに、牛乳、カット野菜に加えて,肉類などあらゆる食品を用いて測定を行い、その中でも特異的MVCsが検出されるかを確認することで、本研究の方法が細菌検査に応用できるか検証する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により研究のための時間が減少したこと、また装置修理もメーカーの対応が遅れたことも相まって計画通りに測定を実施することが困難であった。このため、測定に伴う消耗品費が使用がなかったため次年度使用額が生じた。現在は、計画通りに測定を実施しており、超高速GCおよびGC-MS 分析のための消耗品費(カラム、液体窒素、ヘリウムガス等)に使用する予定である。
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