研究実績の概要 |
本研究は,細菌が産生する揮発性化合物(MVCs)を指標として食中毒細菌のスクリーニング検査法を確立することを目的としている。本研究室が保有するBacillus, Citrobacter, Escherichia, Enterobacter, Enterococcus, Klebsiella, Listeria, Morganella, Salmonella, Staphylococcus, Serratia計12属34菌株について,定常期培養上清のMVCsを固相マイクロ抽出法により捕集後,超高速GCを基盤とした電子嗅覚ノーズに供し,得られたクロマトグラムの主成分分析を行い菌属間のMVCsに違いがあるか解析した。次に,GC-MSによる測定と超高速GCのそれぞれのデータベースのクロスサーチを用いて大腸菌MVCsの同定を行なった。また、同定された化合物については、培養中の経時的な生産量を測定した。その結果、まず、全て属の細菌のMVCsを一斉に主成分分析した場合、Bacillus属とMorganella属は他の菌属と第一主成分が大きく離れ,匂いの特徴が違っていることが明らかとなった。しかし、主成分分析では属や種の群分けはできなかった。一方,腸内細菌科菌群,大腸菌群,大腸菌のように類縁菌に限定して解析を行うとMVCsによる群分けが可能であった。特に大腸菌では非病原性と病原性による群分けができたためMVCsの同定を行った結果,新規に2-Heptanone, 2-Nonanoneを同定した。これらの化合物を指標とすることで病原大腸菌のスクリーニングが可能になると期待された。また,これらの生成量は対数増殖期に最大になり,定常期以降は減少したため,培養時間を考慮した測定が重要になると考えられた。
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