油脂の品質評価に水晶振動子センサーが分析法として有効であるか調べた結果、下記のように水晶振動子センサーの有効性を認めた。 1)油脂の冷却試験:コーン未精製油、コーンサラダ油、綿実白絞油、綿実サラダ油を0℃にて冷却しながら、共振周波数と共振抵抗を測定した結果、冷却により共振周波数が大きく減少し、共振抵抗が増加した。とくに綿実サラダ油の方が綿実白絞油より低い共振抵抗を示した。以上より、共振抵抗の測定から食用サラダ油を評価できると示唆された。 2)油脂の劣化度評価:植物油を180℃で加熱した後、共振周波数と共振抵抗を測定した結果、とくにこめ油で、加熱劣化に伴い共振抵抗が増加した。 3)油脂の種類(ヨウ素価):アマニ油、ダイズ油、ゴマ油、ナタネ油、コメ油、オリーブ油を35℃で水晶振動子にて測定した結果、油脂の種類によって共振抵抗が異なり、アマニ油が最も共振抵抗が低く、オリーブ油で共振抵抗値が最も高かった。油脂中の二重結合数(ヨウ素価)が増加するにつれ、共振抵抗が低下することが明らかとなった。これより、水晶振動子センサーは油脂の種類の判別に有効であることが示された。 4)脂質構造の影響(R3年度):脂質の化学構造の評価に水晶振動子センサーが有効であるかを、各種脂肪酸誘導体について、水晶振動子センサーの共振抵抗値を調べた結果、脂肪酸誘導体の種類により共振抵抗が異なった。脂肪酸の二重結合数が多いほど共振抵抗値は減少した。また、官能基がエステル(メチル・エチル)<水酸基<カルボキシ基の順に共振抵抗は増加した。グリセリドではジオレイン<トリオレイン<モノオレインと、水酸基を2個もつモノオレインで高い共振抵抗を示した。一方、不飽和脂肪酸の共振抵抗に二重結合のシス・トランスによる違いは見られなかった。以上より、水晶振動子センサーは、脂肪酸誘導体の構造を推測するのに有効であると示唆された。
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