研究課題/領域番号 |
18K05485
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
鎗田 孝 茨城大学, 農学部, 准教授 (20358295)
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研究分担者 |
大竹 貴光 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60443173)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 食品分析 / 残留農薬分析 / 超高温水 / 抽出 |
研究実績の概要 |
農薬等を対象とする食品残留分析は有機溶媒を使用するが故に、環境への負荷や分析時間が長い等の問題点がある。そこで本研究では、有機溶媒の代替に100℃以上に加熱した超高温水を利用した超高温水抽出法(Superheated Water Extraction, SWE)を開発し、食品残留分析をグリーン化及び迅速化することを目指している。 昨年度にスタテック(静置)条件におけるSWEを検討したところ、静置回数を増やすことによって回収率が向上することが確認された。これをうけて本年度はまず、ダイナミック(連続通水)条件での抽出を可能とするSWE装置を試作した。装置は、高速液体クロマトグラフ用ポンプとデガッサー、ガスクロマトグラフオーブン、超臨界流体クロマトグラフ用背圧弁、高圧流路切り替えバルブ、ステンレス製抽出管より構成させた。さらに、この装置を用いて、キャベツを分析試料とした添加回収試験を行った。その結果、検討した抽出温度条件(50、100、150、200℃)において、スタテックSWEよりも高い回収率が得られることが確認できた。また、高極性農薬は比較的低温での抽出が可能であるのに対し、低極性農薬にはより高温での抽出が必要であることも明らかになった。ただし、150℃になると回収率が低下した農薬もあり、その原因として超高温水による分解が考えられた。そこで、農薬の分解を最小限に制御しながらより多種類の農薬の同時抽出を可能とすべく、抽出中に抽出温度を上昇させる温度プログラムSWEを検討した。その結果、最適化したプログラム条件(抽出温度:50℃→200℃、抽出時間:30分)において検討対象78農薬のうち48農薬について良好な回収率(70~120%)が得られ、本法は特に中~高極性農薬のスクリーニング法として有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りに温度プログラムを適用したSWEを検討し、5種類のプログラムの中から最適条件を設定できた。さらにダイナミック(連続通水)SWEが有効であるとの知見を得たことから、それを具現化する試作装置を試作し、農薬の回収率のさらに向上させることもできた。これらの結果から、抽出の妥当性が確認された農薬の種類及び抽出に必要な時間も目標通りであった。 以上より、概ね順調に進捗していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通りに、SWEによって得られる抽出液のクリーンアップ法について検討し、分析時間の更なる短縮を目指す。具体的には、残留農薬抽出法として適用されているQuEChERS法の適用を予定している。また、今年度確立した抽出法の適用範囲を広げるために、キャベツ以外の試料を用いた妥当性確認も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で使用予定であった認証標準物質を用いて予備分析を行ったところ、認証標準物質の粒径が小さすぎるために、実野菜試料のモデル物質としては不適当であることが分かった。他に代替となる認証標準物質がなかったために、市販のキャベツ試料を代替に用いて実験を遂行し、結果として未使用額が生じた。未使用額は、令和2年度本研究課題において、試薬等の消耗品として使用する。
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