研究実績の概要 |
農薬等を対象とする食品残留分析は有機溶媒を使用するが故に、環境への負荷や分析時間が長い等の問題点がある。そこで本研究では、有機溶媒の代替に100℃以上に加熱した超高温水を利用した超高温水抽出法(Superheated Water Extraction, SWE)を開発し、食品残留分析をグリーン化及び迅速化することを目指している。 昨年度にダイナミックSWEを検討し、さらに温度プログラムを適用した結果、一昨年度に検討したスタティックSWEよりも高効率に農薬を抽出することができた。しかし、その後に行うクリーンアップ操作では液/液分配操作や固相抽出などを行う必要があったため、多量の有機溶媒と時間が必要であるという問題は残されていた。 そこで、本年度はまず、クリーンアップの迅速化を検討した。具体的には、液/液分配と固相抽出の代替として、分散固相抽出法の適用を検討した。その結果、固相吸着剤として活性炭と一級および二級アミン修飾シリカゲルを用いることにより、使用するアセトニトリルの量を15 mLまで削減でき、さらに所要時間も従来法の1/5である30分程度にすることができた。さらに、固相剤の量を検討し、前出の固相抽出剤それぞれを50 mg用いた場合に、クリーンアップ過程の回収率が最も高くなることを明らかにした。 さらに、SWEにおける温度プログラム条件の最適化も検討した。具体的には、分析中に昇温速度を変化させる多段階プログラムを検討したところ、抽出時間を30分に維持したまま、相対的に高極性の農薬の回収率を改善できた。 以上のように、食品残留農薬分析にSWEを適用しその後のクリーンアップも最適化した結果、有機溶媒使用量を15 mL程度まで削減し、かつ1時間程度で分析することが可能になった。今後、特に中~高極性農薬のスクリーニング法としての適用が期待される。
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