研究課題/領域番号 |
18K05488
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
臼井 真一 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (50346417)
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研究分担者 |
廣畑 聡 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (90332791)
柴倉 美砂子 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (30314694)
篠畑 綾子 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (70335587)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HDL / エタノール / リポ蛋白代謝 / コレステロール |
研究実績の概要 |
1.前年度に引き続き,HepG2細胞のHDL生合成におけるエタノールの影響を検討した。ゲルろ過クロマトグラフィによる解析ではエタノールにより培養上清中のHDL-コレステロールの増加傾向,HDL粒子径の大型化,LDLコレステロールの増加が見られた。これらの変化がどのようなメカニズムによるものなのか,HDL代謝に直接的に関与する蛋白質(ABCA1, HTGL, LCAT,CETPなど)についてウエスタンブロット解析を実施したが,これまでの検討ではエタノールによる明らかな変動は認められなかった。また,コレステロール代謝やLDL代謝の変化が間接的にHDL代謝へ影響を及ぼしている可能性を考え,SREBP2, CYP7A1, MTP, LDLレセプターなどの蛋白発現も分析したが,いずれも一定の傾向をもった結果が得られなかった。 2.今年度は新たに動物実験を開始した。1%エタノールをSDラットに自由摂取させ,10週後に血清および各臓器を採取した。飼料と飲料の摂取量はコントロール群(水飲料)に比べエタノール摂取群で少ない傾向があったが,体重変化には有意差が見られなかった。肝臓組織はエタノールによる脂肪肝の発症は見られず,肝障害のマーカーである血清ALT,AST値もコントロール群と有意差がなく良好な結果であった。血清脂質分析では,エタノール摂取により総コレステロールの減少傾向が見られ,HDL-コレステロールは予想に反して減少傾向であった。血清アポE濃度およびHDL-アポE濃度は低下していた。HDLサブクラス解析では,アポE-rich HDLが減少傾向であった。脂質組成では,HDLの遊離コレステロール比率が減少している傾向が見られた。これらの結果は,アルコール摂取がHDL-コレステロール量だけでなく,クオリティーの変化に関与している可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験の準備に時間を要し,開始時期が当初予定よりも遅れた。また,既報や予想と異なるデータがしばしば得られ,再実験などで時間を要したことから,「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に採取した動物組織の分析を中心に実験を進める。HDL生合成に深く関与する肝臓や小腸などを対象に,HDL代謝関連蛋白質,コレステロール代謝関連蛋白質の遺伝子発現,蛋白質発現を評価していく。これまでの動物実験ではエタノール摂取による血清脂質変化が予想よりも小さかったため,エタノール濃度を上げた動物実験を追加することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験動物の遺伝子発現解析が予定よりも遅れており,実験に必要な試薬等の費用に差異が生じた。令和元年度の未使用額は次年度分と合わせて,主に遺伝子発現解析にあてる予定である。
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