研究課題/領域番号 |
18K05490
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西山 和夫 宮崎大学, 農学部, 准教授 (40164610)
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研究分担者 |
榊原 陽一 宮崎大学, 農学部, 教授 (90295197)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レドックス制御 / 親電子性物質 / ニトロオレイン酸 / スルフォラファン / クルクミン |
研究実績の概要 |
近年、親電子性物質であるニトロ化脂肪酸やスルフォラファンのようなイソチオシアネート類は、タンパク質チオール基との反応を介して抗炎症作用や抗がん作用を示すことが報告されている。これまでにニトロ化脂肪酸の一種である9-ニトロオレイン酸は、がん細胞の増殖を抑制する一方で、条件によっては細胞遊走を促進することを示した。そこで本研究では、様々な親電子性物質を用いて細胞の増殖や遊走に与える影響を評価することで、親電子性物質のがん細胞に対する作用の特徴づけをすることを目的として研究を行った。細胞はヒト膀胱がん細胞T24、ラット正常線維芽細胞3Y1、3Y1細胞をがん遺伝子rasで形質転換したHR-3Y1-2細胞を用いた。親電子性物質としては、9-ニトロオレイン酸、スルフォラファンおよびクルクミンを用いた。細胞増殖抑制試験では1~50μMの試験物質で細胞を処理後、トリパンブルー色素排除法にて生細胞数をカウントした。また、細胞遊走はセルスクラッチャーで細胞をはがした後、一定時間ごとに遊走した細胞の面積から遊走率を求めた。親電子性物質はT24細胞の増殖を濃度依存的に抑制した。また、3Y1細胞とHR-3Y1-2細胞の細胞増殖抑制試験において9-ニトロオレイン酸では両細胞に差は認められなかったが、スルフォラファンとクルクミンはHR-3Y1-2細胞選択的に細胞増殖を抑制した。また、これらの親電子性物質はT24細胞では低濃度で細胞遊走を促進し、高濃度で遊走を抑制したが、HR-3Y1-2細胞では濃度依存的に細胞遊走を抑制した。これらのことから、がん細胞選択的な細胞増殖抑制作用は親電子性物質の種類により異なり、細胞遊走に対する作用はがん細胞の種類によって異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3種類の親電子性物質と3種類の細胞を用いた検討しか実施することができなかった。さらに多くの種類の細胞と親電子性物質を用いた検討を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
がん細胞の遊走に対する親電子性物質の作用を明らかにするためにこれまで用いてきたwound-healing assayだけでなく、トランスウェルを使用した試験法を導入して、複数の試験法において同様の結果が得られることを示す。使用する細胞と親電子性物質の種類を増やして、より普遍的な結論が得られるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
多種類の培養細胞株と親電子性物質を用いた検討を実施する予定であったが、3種類の細胞と3種類の親電子性物質を用いた検討しか実施することができなかった。次年度は、培養細胞株と親電子性物質を増やして検討する予定であり、繰り越した研究費はこれらの購入に使用する。
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