研究課題/領域番号 |
18K05491
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
榎本 俊樹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (70203643)
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研究分担者 |
笹木 哲也 石川県工業試験場, 化学食品部, 専門研究員 (00504846)
道畠 俊英 石川県工業試験場, 管理部, 次長 (10504855)
小柳 喬 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (20535041)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 魚醤油 / 重金属 / ヒ素 / 水銀 / ヒスタミン / 除去技術 |
研究実績の概要 |
前年度の研究で、ヒ素添加魚醤油のヒ素は、タンニン酸処理でほとんど除去できることが明らかとなり、魚醤油中のヒ素は結合型で存在していることが示唆された。そこで、ヒ素添加魚醤油中のヒ素の存在形態についてゲル濾過クロマトグラフィーを用いて検討した。その結果、魚醤油中のヒ素は、二つのピークとして溶出され、キレート処理では後半のピークが、タンニン酸処理では前半のピークが消失した。また、20%食塩溶液中のヒ素はタンニン酸に結合しないことを確認した。以上より、魚醤油中のヒ素は、遊離型と結合型で存在していることが示唆された。さらに、ベトナム産魚醤油を凍結乾燥し、濃縮抽出液を調製し、ヒ素を検出したところ、検出可能な濃度以上のヒ素が検出された。そこで、この濃縮抽出液に対しキレート処理、タンニン酸処理を行ったところ、タンニン酸処理によってほとんどのヒ素が除去できた。よって、魚醤油のヒ素は、2種類の形態で存在しており、タンニン酸の処理で結合型のヒ素を、キレート樹脂で遊離型のヒ素を除去可能であることが明らかとなった。 次に、国内外の魚醤油20種の水銀含量について検討を行った。その結果、日本の市販マグロ魚醤油は1.89±0.22、イタリアのコラトゥーラは1.05±0.09 (ng/100mL)と他の魚醤油よりも水銀が約2~3倍多く含まれていた。 魚醤油中のヒスタミンについて水銀と同様20種類の魚醤油を用いて検討した結果、魚醤油の基準値400ppmを超えるものが30%程度存在した。400ppmを超える2種のサンプルを用いて、イミノジ酢酸を交換基に持つキレート樹脂でヒスタミン除去を試みたところ、ヒスタミンを30~50%除去できることが示唆された。また、魚醤油熟成中のヒスタミン産生耐塩乳酸菌の初期増殖を抑える条件について検討した結果、初期発酵温度を20℃前後に保つことで増殖を制御できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、魚醤油中のヒ素の存在形態を中心に検討した。その結果、ヒ素添加魚醤油と同様、魚醤油中に含まれるヒ素のほとんどは結合型として存在していることが明らかとなった。 また、魚醤油に含まれる水銀においては、測定に使用した20種類のサンプルにおいて、マグロ魚醤油とコラトゥーラが他の魚醤油と比べ高い水銀含量となった。しかし、これら2種の水銀含量は、水銀の排水基準、魚介類中の水銀暫定的規制値と比べ低い値であり、健康への被害はないものと思われる。 さらに、魚醤油中のヒスタミンについて測定したところ、魚醤油の基準値400ppmを超えるものが30%程度存在した。ヒスタミン濃度が1,000ppmを超える2種のサンプルを用いて、イミノジ酢酸を交換基に持つキレート樹脂によるヒスタミン除去を試みたところ、ヒスタミンを30~50%除去できることが明らかとなった。このことより、魚醤油からのヒスタミン除去にキレート樹脂が有用であることが示唆された。また、試醸した魚醤油熟成中のヒスタミン産生耐塩乳酸菌の初期増殖を抑える条件に付いて検討した結果、初期発酵温度を20℃前後に保つことで増殖を制御できることが示された。 このように、今年度の研究は、当初の研究計画通りおおむね順調に実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
魚醤油中のヒ素の存在形態を明らかにし、その除去技術についてもおおむね確立することができた。しかし、水銀については、含まれる含量が低く、濃縮、あるいは添加した魚醤油を調製し、キレート樹脂やタンニン酸処理技術等による除去技術の検討が課題として残された。 また、魚醤油のヒスタミンにおいては、魚醤油の基準値を超えるものが30%程度存在し、ヒスタミンの除去技術の確立の重要性が認識できた。さらに、イミノジ酢酸を交換基に持つキレート樹脂によるヒスタミン除去を試みたところ、ヒスタミンを30~50%除去できることが明らかとなった。このことより、魚醤油からのヒスタミン除去にキレート樹脂が有用であることが示唆された。しかし、今年度はイミノジ酢酸を交換基に持つキレート樹脂のみを用いた検討しか行っておらず、複数のキレート樹脂についても検討する必要がある。さらに、今年度は、微生物制御あるいは微生物利用によるヒスタミン除去についても検討したが、ヒスタミン産生耐塩乳酸菌の増殖制御しか検討できなかった。したがって、微生物利用によるヒスタミン除去が今後の課題として残された。 次年度は、魚醤油からの水銀及びヒスタミン除去を主に検討を進める予定である。
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