腸管は最大の免疫器官であり、腸内細菌は腸管の制御性T細胞やγδT細胞、Th17細胞など免疫細胞の分化制御に密接な関わりを持っている。しかしながら腸内細菌叢の異常が、どのように腸管のT細胞の分化制御に影響し、さらには急性期脳梗塞の病態に関与しているかについては、未だ明らかでない。私たちは糖尿病マウスを用いた先行研究において、腸内細菌叢の異常が脳梗塞急性期の組織障害に関与することを明らかにしている。本研究では肥満・糖尿病マウスにおける腸内細菌叢異常と腸管の免疫細胞への関連に着目し、脳梗塞急性期の病態について解析を行うことを目的とした。 C57BL6マウスに高脂肪食(high fat diet: HFD)を投与した糖尿病マウスと、低脂肪食(low fat diet: LFD)を投与した正常血糖マウスの2群を作成した。これらのマウスを用いて一過性中大脳動脈閉塞(tMCAO)による脳梗塞を作成したところ、tMCAO72時間後ではHFD群で有意に神経症状の重症度が高かった。 また腸管リンパ球による脳梗塞への影響を調べるために、マウスの腸管の粘膜固有層に存在するリンパ球についてフローサイトメトリーによる比較を行った。HFD群ではLFD群と比較して、小腸のインターロイキン(IL)-17産生性CD4陽性Tリンパ球(Th17細胞)が有意に増加していたが、一方で大腸では明らかな差は認めなかった。γδT細胞は小腸および大腸ともに両群に差はみられなかった。さらに急性期脳梗塞組織におけるT細胞の関与を明らかにするために、HFDまたはLFDを投与した17週齢のC57BL6マウスに対して一過性中大脳動脈閉塞による脳梗塞を作成し、72時間後に脳梗塞組織を採取。現在フローサイトメトリーにより急性期脳梗塞組織に存在するリンパ球について解析を行っている。
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