研究実績の概要 |
令和元年度は当初の研究計画通りの内容を遂行した。以下に項目ごとの研究実績の概要を記載する。 1)中鎖脂肪酸含有トリグリセリド(MCT)および種々吸収促進剤による生体異物の消化管吸収性変化の検証 本年度では、生体異物の性質の特徴(分子量:250程度から40,000程度まで)を広げた検討を行った。低分子物質として分子量が同程度であるものの脂溶性が大きく異なるAtenolol (ATE)、Metoprolol (MET)およびPropranolol (PPO)の消化管吸収性に及ぼすMCTの影響を評価した。また分子量が10,000、20,000および40,000のFluorescein isothiocyanate-Dextran(低膜透過性物質)を用いて検討した。各化合物の消化管吸収性におよぼすMCTの影響を観察したところ、水溶性が高いATEの吸収はMCTによる増加傾向が認められたものの有意な差はなく、また脂溶性の高いMETとPROの吸収に対するMCTの影響は観察されなかった。一方高分子化合物では、分子量が20,000程度まではMCTの影響が観察されたもののそれ以上では観察されなかった。 2)低膜透過性化合物の消化管吸収性に及ぼす吸収促進作用を有する化合物の影響の定量的評価法の確立 低膜透過性化合物の消化管吸収に及ぼすMCT消化により生じた脂肪酸の影響をin vitroで定量的に評価するために Dissolution/Permeation systemを用いた評価法の構築を試みた。D/P systemの管腔側にリパーゼを添加したところ、適用した小腸モデル膜であるCaco-2単層膜の膜抵抗値は著しく低下する一方でFD-4の透過は上昇した。したがって、吸収促進作用を有する化合物の影響に関して本システムを用いた評価が可能であると考えられた。
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