研究課題/領域番号 |
18K05499
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研究機関 | 富山県薬事総合研究開発センター |
研究代表者 |
柳橋 努 富山県薬事総合研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (60710887)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | IL-5 / IgA / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
近年、腸内細菌叢の破綻が代謝、神経、免疫疾患と関連することが多数報告されており、これらの疾病の予防および治療においては、腸内細菌叢を正常な状態に保つことが需要と考えられている。我々は、グループ2自然リンパ球(ILC2)がインターロイキン(IL)-5を介して免疫グロブリン(Ig)A産生を調節し、腸内細菌叢の調節に寄与することを明らかにしている。一方、定常状態における、ILC2のIL-5産生調節機構については不明な点が多い。 平成30年度までに、腸内細菌の存在しない無菌マウスの大腸では、通常環境下で飼育したマウスに比べ、IL-5のmRNA発現が著しく減少することを見出した。令和元年度には、どのような腸内細菌がIL-5産生を司るのか解析するため、マウスを離乳直後から4週間、抗菌スペクトルの異なる様々な抗生剤を含む飲水を与え、特定または大部分の腸内細菌を減少させた際の大腸IL-5 mRNA発現を解析した。腸内細菌の菌数が著しく低下する抗生剤の組合せでは、無菌マウスと同様に大腸IL-5発現の減少が予想されたが、予想に反し大腸IL-5 mRNA発現減少は認められなかった。この時の腸内細菌を解析すると、腸内細菌叢の多様性が失われており、特定の腸内細菌の割合が増加していた。従って、この菌がIL-5産生と関連している可能性と、大腸IL-5産生は離乳前から腸内細菌の影響を受けている可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗生剤で大部分の腸内細菌を除去しても大腸のIL-5 mRNA発現が減少しなかったことは予想外であったため、計画外の実験を追加した。このため、進捗にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、(1)抗生剤投与でも除去不能な菌がIL-5産生を司る可能性と、(2)離乳前から腸内細菌の影響を受けている可能性について検証を進める。 (1)抗生剤投与でも除去不能な菌がIL-5産生を司る可能性の検証:大部分の腸内細菌を減少させる組合せの抗生剤を投与したマウスから糞便を無菌マウスに移植し、大腸IL-5発現が増加するかどうかを定量PCRで解析する。この時IL-5産生ILC2の細胞数をフローサイトメトリー法で解析する。 (2)離乳前から腸内細菌の影響を受けている可能性の検証:予め抗生剤投与を開始した成獣マウスを交配に用い、出産した仔マウスを8週齢まで飼育し、抗生剤を使用しなかったマウスと大腸IL-5 mRNA発現を定量PCRで比較する。また、4週間の抗生剤投与により耐性菌が出現した可能性も否定できないため、抗生剤の投与期間を短くした際のIL-5発現についても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の予算が一部繰り越されていたことに加え、令和元年度は、計画外の実験を追加したが、全体としては進捗に遅れが生じたため、繰越し金が発生した。
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