近年、腸内細菌の構成バランスの破綻と,代謝・神経・免疫疾患等の発症との関連性が示唆されており,これら疾病の予防および治療方法を開発するためにも,腸内細菌の恒常性がどのように保たれているのか理解する必要がある。免疫グロブリン(Ig)AはT細胞依存性およびT細胞非依存性の二つの経路を介して産生され,腸内細菌の構成を適正な状態に保つために重要な役割を担っている。我々はこれまでに,腸管においてグループ2自然リンパ球(ILC2)がインターロイキン(IL)-5を介しT細胞非依存性IgA産生を調節することを明らかにしている。本年度は,腸内細菌構成バランスの恒常性維持におけるIL-5の役割を検討した。次世代シーケンシング技術を用いた網羅的な解析を実施し,T細胞欠損マウスと,T細胞・IL-5二重欠損マウスの腸内細菌構成の多様性が有意に異なることを示唆する結果を得た。さらに,T細胞欠損マウスに比べ,T細胞・IL-5二重欠損マウスにおいて有意に減少している菌を見出した。これらの結果から,ILC2がIL-5を介しT細胞非依存性IgAを調節することで,腸内細菌構成バランスを適正な状態に維持することに寄与していると推察された。
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