コーヒーポリフェノールの成分であるクロロゲン酸によるマクロファージ遊走阻止因子の発現への影響について細胞株を用いて解析した。マウス由来のマクロファージ系細胞であるRAW264.7細胞を培養し、そこにリポポリサッカライド添加によるマクロファージ遊走阻止因子の細胞外への分泌を解析し、さらにクロロゲン酸投与による影響を解析した。クロロゲン酸の前投与によってこれらのマクロファージ遊走阻止因子発現系は有意に抑制がかかったことが明らかとなった。同様の実験条件で腫瘍阻止因子(TNF-α)の分泌抑制を検証したところクロロゲン酸投与によってTNF-αの分泌抑制効果も確認された。アゾキシメタン単回投与とデキストラン硫酸ナトリウムの繰り返し投与によるマウス大腸腫瘍発生モデルにおいてマクロファージ遊走阻止因子タンパクが発現増加したが、特に腫瘍細胞に強発現し境界周囲の非腫瘍細胞との発現に差を認めた。また、腫瘍組織内への単球系細胞(F4/80陽性細胞)の浸潤が増加していることが確認された。マクロファージ遊走阻止因子ノックアウトマウスにおいて同様の薬剤を投与した大腸腫瘍発生目的モデルマウスにおいてマクロファージ遊走阻止因子タンパクの発現が認められなかったのを確認し、F4/80陽性細胞の浸潤が野生型マウスと比べて減少していることがわかった。これらのマウスの大腸組織においてシクロオキシゲナーゼの発現を解析したところ、シクロオキシゲナーゼ2タンパクの発現が大腸腫瘍発生モデルにおいて野生型マウスでは発現増加がみられたが、マクロファージ遊走阻止因子ノックアウトマウスではシクロオキシゲナーゼ発現増加は抑制傾向であった。
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