研究課題/領域番号 |
18K05504
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
稲垣 瑞穂 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (50626356)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラクトフォリン / ロタウイルス / 予防 / 牛乳 / 糖鎖 / 受動免疫 |
研究実績の概要 |
我が国では生後2か月より様々なワクチン接種が開始される。しかし、乳児の免疫機能は未熟なため、免疫を高める食品素材の開発も必要とされている。我々は、牛乳乳清に含まれるラクトフォリン(LP)が、乳幼児下痢症の主因であるロタウイルスの増殖を抑制することを見い出した。LPの活性は「抗体に匹敵する驚異的な阻害力」と「LPは宿主細胞に作用して細胞内でのウイルス複製を抑制するメカニズム」に特徴づけられ、宿主細胞の恒常性強化による受動免疫の可能性を指摘する。本研究の目的は「ウイルスが誘導する宿主細胞の恒常性破綻のきっかけ(感染初期)に対してLPがどのように抑制するのか」を明らかにすることである。 1年目は、LPが示す活性に対する理解を深めるため、LPの示す抗ウイルス活性に寄与する分子基盤の解明に取り組んだ。LPは、1つのN型糖鎖構造と2本のO型糖鎖構造、C末端にはαヘリックスを持つ。加熱処理および酵素処理に耐性を示したことから、活性には糖鎖構造の関与が考えられている。これまでにゲルろ過クロマトグラフィー(Sephadex G-25)によるN結合型糖鎖の分離を試みたが(若手B 26850078)、質量分析を用いた検証から分離の精度が低いことが明らかとなった。本研究では、糖鎖を分画するのではなく、酵素を用いた完全切断に切り替えて検証を進めている。LPをN-glycosidase Fを用いてN結合型糖鎖を酵素的に切断したところ、活性は保持することを確認した(再現性の確認)。続いて、Sialidaseを用いて末端のシアル酸を酵素的に切断したところ、活性が保持されることがわかった。次年度では、O型結合型糖鎖の完全切断を試みる。並行して、ウイルス接種から1時間以内の細胞内イベントに対してLPがどのような働きをするかの検証を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HPLC分取装置の故障によりサンプル調製が遅れ、全体のスケジュールに影響が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度のLPの活性部位の同定に加え、当初の計画通り、次年度からLPが示すロタウイルス感染初期の阻害メカニズムの追求を開始する。次年度より1名を増員し、合計2名の修士学生の協力を仰ぎながら遂行する。
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