本研究では、ファイトケミカルの腸内動態と腸内環境におよぼす影響について、神戸大学ヒト腸内細菌叢モデル(KUHIMM)を用いて評価した。KUHIMMは、個人に特徴的な腸内細菌叢を再現できる特徴を持っており、様々なプレバイオティクスの評価系として有効であることが分かっている。このKUHIMMを用いて、ファイトケミカルの代表として、イヌリン、ケルセチン、ルテイン、グルコラファニンの腸内細菌叢におよぼす影響を検討した。 今年度は、カロテノイドの一種であるルテインと、含硫化合物の一種であるグルコラファニンをKUHIMMにて評価した。これらの化合物は、野菜・果物等の直物性食品に含まれるほか、機能性が着目されているため、サプリメント等にも含有量が高い。また、グルコラファニンは、腸内細菌叢による代謝を受けてスルフォラファンに変換されることが知られている。これらの化合物を一日あたりの摂取量を参考にKUHIMMにて評価したところ、一日摂取相当量では腸内細菌叢構成およびその代謝産物である短鎖脂肪酸の産生量に影響をおよぼさなかった。このことから、これらの化合物は、過剰投与にならない限りはヒト腸内細菌叢に影響をおよぼす可能性が低いことが示唆された。引き続き、腸内細菌叢によるこれらの化合物の代謝物が大腸様の腸管上皮細胞に与える影響について、ムチン産生能が確認されているHT29-MTX細胞を用いて検討したいと考えている。
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