研究課題/領域番号 |
18K05511
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研究機関 | 帝塚山学院大学 |
研究代表者 |
楠堂 達也 帝塚山学院大学, 人間科学部, 准教授 (00460535)
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研究分担者 |
向井 貴子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 助手 (60701464)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 褐色脂肪細胞 / 脂肪分化 / ビタミンD |
研究実績の概要 |
申請者らはビタミンDの新規生理作用として褐色脂肪分化促進作用を発見した。本研究はビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズムや生理的意義を明らかにすると共に、応用化に向けた分子基盤を構築することを目的とする。平成31年度は、(1)ビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズムの解明と(2)ビタミンDによる褐色脂肪化の個体レベルでの検証を柱として研究を行った。 (1)ビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズムの解明:昨年度の結果より、ビタミンDが分化の初期段階に作用することが明らかとなったことから、褐色脂肪分化の初期に働くPPARsやC/EBPsなどの分化誘導因子の発現を検討した。しかしながら、これらの因子の遺伝子発現量に変化は認められなかった。一方、Akt、ERK、AMPKなどのシグナルタンパク質のリン酸化状態をウエスタンブロッティングにより検討した。しかし、褐色脂肪分化促進のメカニズムとなる変化を発見することはできなかった。従って、ビタミンDによる褐色脂肪分化促進作用は、既存のメカニズムとは異なっていると考えられた。(2)ビタミンDによる褐色脂肪化の個体レベルでの検証:個体レベルでの解析のために、ビタミンD受容体(VDR)遺伝子欠損マウスを用いた実験を計画していたが、VDR遺伝子欠損マウスは小型で脱毛が著しいため、本実験の遂行には問題があると判断された。そこで、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた部位特異的ノックダウンにより褐色脂肪特異的VDR発現抑制マウスを作製し、本解析に用いることとした。複数のVDR抑制配列から最も抑制効果の高い配列を選択し、VDR抑制アデノ随伴ウイルスベクターを作製した。令和2年度は、個体への投与を行い、解析を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではビタミンDの褐色脂肪分化メカニズムや生理的意義を明らかにすると共に、応用化に向けた分子基盤を構築することを目的としている。平成31年度は (1)ビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズムの解明、(2)ビタミンDによる褐色脂肪化の個体レベルでの検証実験を中心に実施した。(1)のメカニズムの解明については、平成31年度は既報のビタミンDシグナル、褐色脂肪分化関連シグナルについての検討を行った。現在までのところ、メカニズムの解明には至っていないが、おおむね順調に解析を進めている。(2)の個体レベルでの検証実験については、VDR遺伝子欠損マウスから、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた褐色脂肪特異的VDR発現抑制マウスに切り替えたが、本マウス作製に必要なアデノ随伴ウイルスベクターの作製を終了した。以上より、研究はおおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は最終年度であるため、 当初の計画に従い、(1)ビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズムの解明、(2)ビタミンDアナログを用いた構造機能相関、(3)ビタミンDによる褐色脂肪化の個体レベルでの検証を行うとともに、研究を総括する。(1)ビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズムの解明:ビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズムに関しては、これまで通りの解析を進めていくとともに、VDR非依存的なメカニズムについても検討を行う。(2)ビタミンDアナログを用いた構造機能相関:さらに多くのビタミンDアナログについて褐色脂肪化作用を検討し、ビタミンDアナログの立体構造と機能の相関についてまとめる。(3)ビタミンDによる褐色脂肪化の個体レベルでの検証:VDR抑制アデノ随伴ウイルスベクターを用いた部位特異的ノックダウンにより褐色脂肪特異的VDR発現抑制マウスを作製し、褐色脂肪分化への影響を検討する。また、本マウスにおいて小動物用温度調節機能付きチャンバーを用いた寒冷耐性実験を行い、寒冷時の褐色脂肪分化とビタミンDシグナルの関連を個体レベルで解析する。以上、(1)~(3)の細胞、個体レベルでの実験データを総括し、ビタミンDによる褐色脂肪分化メカニズム、生理的意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 予定としていた動物実験を延期したため、次年度使用額が生じた。 使用計画 今年度、動物実験とその解析費用に充てる。
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