研究課題/領域番号 |
18K05513
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
冨田 理 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主任研究員 (70758101)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域伝統発酵食品 / メタボロミクス / メタゲノミクス / メタボローム解析 / メタゲノム解析 / 乳酸菌 / Lactobacillus |
研究実績の概要 |
地域伝統発酵食品として長野県木曽地方の乳酸発酵食品「すんき」に着目し、その乳酸菌叢と成分組成をメタゲノムおよびメタボローム解析を用いて包括的に解析することを目的としている。品評会等で木曽地域の一般家庭または農産物加工場で製造されたすんきの収集を行い、平成30年度はその一部について成分および菌叢の解析が完了した。メタボローム解析では核磁気共鳴分光法(NMR)により水溶性成分を、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフィー/質量分析法(SPME-GC/MS)により揮発性成分の一斉分析をそれぞれ実施した。菌叢については細菌の16S rRNA遺伝子のV3-V4領域を標的とした次世代DNAシークエンシングにより解析した。メタボローム解析では試料間の成分組成の相違が明らかとなり、乳酸・酢酸を含む各種の有機酸や、アルコール、糖アルコール、アミノ酸およびアミノ酸分解物、グルコシノレート分解物、エチルエステルなど、多数の成分に顕著な寄与が観察された。これらの成分は各試料の特徴を示すマーカー成分の候補として利用できると期待される。メタゲノム解析ではいずれの試料も乳酸菌が97%以上の占有率を示した。特にLactobacillus属乳酸菌がほとんどの試料でもっとも優勢であることが明らかとなり、少数の試料でPediococcus属乳酸菌も優勢であることが示された。その他にはLeuconostoc属、Lactococcus属、Enterococcus属などの乳酸菌が検出された。最優勢であるLactobacillus属乳酸菌の中で、OTUの構成比は試料ごとに大きく異なっていた。したがって、すんきの乳酸菌叢はLactobacillus属の菌種レベルで異なっており、その差異が成分組成に影響を及ぼしていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木曽町および木曽地域の農産物加工場の協力により、現在までに当初の目標を上回る300点以上の試料を収集することができ、研究遂行のために必要と考えられる試料数を確保した。メタボローム解析とメタゲノム解析は計画通りに進行しており、現段階においてすでに成分組成と菌叢の相違が検出されている。また、最終年度にはin vitro乳酸発酵試験を予定しているが、その供試菌株の選抜に必要となるすんき由来Lactobacillus属乳酸菌を12菌種300菌株以上確保した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、引き続き成分組成と菌叢の解析を進め、平成30年度と合わせて200点以上のデータを収集する。それぞれのデータを解析して成分と菌叢の多様性を明らかにし、すんきを特徴付けるマーカー成分と乳酸菌を同定する。試料ごとに異なるLactobacillus属菌種が優勢となっていることがこれまでに示唆されており、乳酸菌叢とマーカー成分との相関性について多変量解析等による解析を実施する。これらデータを基に、すんきの特定の成分に影響を及ぼすと予想される乳酸菌種を網羅的に絞り込む。さらに、平成32年度においてin vitro発酵試験による検証を行い、すんきの乳酸菌叢と成分組成との関連性について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は次世代DNAシークエンシングを委託分析により実施する予定であったが、所属機関内の解析支援制度を利用することができたため、試薬等の消耗品費のみで解析を行うことができた。次年度は、未使用額とあわせてメタボローム解析と菌叢解析に使用する試薬等の購入に充てる。
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