研究課題/領域番号 |
18K05513
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
冨田 理 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主任研究員 (70758101)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域伝統発酵食品 / メタボロミクス / メタゲノム解析 / 漬物 / 乳酸菌 / Lactobacillus |
研究実績の概要 |
本課題は、地域伝統発酵食品として長野県木曽地方の乳酸発酵食品「すんき」に着目し、その乳酸菌叢と成分組成をメタゲノムおよびメタボローム解析を用いて包括的に解析することを目的としている。平成30年度に引き続き4年間に渡って収集した合計251試料について、細菌の16S rRNA遺伝子のV3-V4領域を標的とした次世代DNAシークエンシングが完了した。全251試料の解析の結果、ほとんどの試料で乳酸菌が97%以上の占有率を示し、241試料は90%以上のLactobacillus属乳酸菌の占有率を有することが明らかとなった。また、例外的な菌叢についても明らかとなり、残りの10試料ではPediococcus属乳酸菌が10%以上の占有率で存在し、50%を超えるものも3試料見られた。1%以上の占有率を示したシークエンスの相同性検索の結果、43の異なる既知の菌種に98%以上の配列相同性を示した(判別不可の近縁種の重複を除く)。Lactobacillus属が30種、Pediococcus属の3種、Leuconostoc属の3種、Weissella属の1種がそれぞれ検出され、すんきにおいてLactobacillus属は優勢であるのみならず種多様性も高いことが考えられた。また、検出菌種の中には一般的には漬物から検出されないものも優勢種として含まれていたが、分離を試みた結果、すんきからの初めての分離例が得られた。さらに、種多様性の指標であるShannon指数については平均2.61であったが、最大4.00から最小0.15とかなり幅広かった。これらの解析結果から、先行研究で検出例のない多数の乳酸菌種がすんきに生息しており、それらの構成は一様ではなく試料間において多様であることが明らかとなった。すんきに見られた菌叢多様性は自然発酵で製造される発酵食品の多様性を反映したものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木曽町および木曽地域の農産物加工場の協力により、当初の目標を上回る300点以上の試料を収集することができ、現在までに研究遂行のために必要と考えられる251試料の菌叢解析データが得られた。最終年度に予定しているin vitro乳酸発酵試験に向けた予備実験として、原料である蕪菜の抽出液におけるすんき由来乳酸菌株の生育を確認できている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、これまでに得られた251試料の菌叢と成分組成との相関性について多変量解析を行い、すんきの特徴差に寄与するマーカー成分の消長に関与する乳酸菌種を特定する。多変量解析で得られた結果をもとにin vitro発酵試験を実施して菌種と成分の相関性を検証し、すんきの乳酸菌叢と成分組成との関連性について明らかにする。好ましい成分組成の形成に寄与すると期待される菌株が得られた場合は実際にすんきの漬け込み試験を実施し、発酵安定性や製品品質に与える影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文の掲載料として支出する予定であったが、原稿受理後、掲載料が年度内に請求されなかったため。また、新型コロナウイルス感染症により参加予定の学会大会が中止となったため。未使用額は次年度に掲載料および学会参加の旅費として支出する。
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