研究課題/領域番号 |
18K05515
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
中村 浩蔵 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (20345763)
|
研究分担者 |
中嶌 岳郎 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (30581011)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 抗ストレス / 機能性食品 / 神経活動 / テレメトリー法 / 血圧 |
研究実績の概要 |
本研究は、抗ストレス食品成分摂取が神経活動を介して生体に与える急性影響を明らかにすることを目的とする。そのために、腎交感神経に電極センサ、腹部大動脈に圧力センサを装着して試験動物の体内に留置し、直接、無麻酔・無拘束状態の神経活動および動脈圧を測定、記録するテレメトリー法を用いる。また、ストレス性内分泌物質であるカテコールアミンレベルの変化でも生体への影響を評価する。抗ストレス食品成分には、γ-アミノ酪酸(GABA)、テアニン、アセチルコリン(ACh)、D-ラクトイルコリン(LCh)、ケルセチン配糖体(イソクエルシトリン)、ゲニポシド酸(GEA)を用い、サンプル濃度10^-6 mol/kg(b.w.)で正常血圧のスプラーグ・ドーリーラット(SDR)への単回経口投与試験を実施し、生体への影響を評価した。テレメトリーセンサの圧力センサ部を右大腿動脈から腹部大動脈に挿入、左背部を切開し神経電位センサ部を腎交感神経に装着、センサ本体をラットの腹腔内に留置し、サンプリング周波数1kHzでデータを収集した。現時点では、腎交感神経活動の有意な低下は見られていない。血圧では、ACh投与で、収縮期血圧、拡張期血圧共に有意な低値を示した。SDRにおいて、抗ストレス食品成分の効果は限られている可能性がある。今後はヒトの本態性高血圧モデルである高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて同様の試験を実施し、SDRとの抗ストレス成分摂取による感受性などの差異を検証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
雄性11-16週齢の正常血圧SDRに、イソフルランおよびペントバルビタール併用麻酔下でKaha社製のテレメトリーセンサ(TRM56SP)装着手術を行った。まず右大腿動脈から腹部大動脈に圧力センサ部を挿入した。その後左背部を切開し神経電位センサ部を腎交感神経に装着し、センサ本体はラットの腹腔内に留置した。回復期間1日以上をおいた後、微量給水瓶を用いて6種類の抗ストレス成分GABA、ACh、LCh、テアニン、イソクエルシトリン、GEAおよび純水(コントロール)を、微量給水瓶を用いて、ラット活動期開始時(午後6時~)に投与した。投与濃度は10^-6 mol/kg(b.w.)とした。データのサンプリング周波数を1kHzに設定、腎交感神経活動は、得られた活動電位を時定数積分20 msで曲線下面積を算出し、血圧は、得られた動脈圧波形のトップを収縮期血圧、ボトムを拡張期血圧とした。投与の影響を受けると考えられる投与後30分間のデータを除き、その後の1時間毎の平均収縮期血圧、拡張期血圧および神経活動面積を22時間まで算出した。また、投与前30分間を基準とした変動値も求めた。収縮期血圧は、純水投与と比較してGABA、テアニン、イソクエルシトリン、GEA投与では有意な差は見られなかったが、ACh投与で9.5時間後の収縮期血圧変動値が有意な低値を示し、その後も低下傾向を示した。LCh投与も低下傾向を示し、12.5時間後で最低値を示した。拡張期血圧でも、ACh投与9.5時間後に変動値が有意な低値を示した。腎交感神経活動は、GABA、テアニン、イソクエルシトリン、LCh投与で低下傾向が見られたが、純水投与と比較して有意な差は見られなかった。また、ストレス性内分泌物質のカテコールアミンレベルも、今のところ大きな変動は確認されていない。
|
今後の研究の推進方策 |
テレメトリーセンサのデザインが新しくなり、テレメトリーセンサ装着手術の技術習得に時間を要したが、現在では問題なく試験を実施できるようになった。来年度は、予定通りSHRへの抗ストレス食品成分の影響をテレメトリー法で評価し、カテコールアミンレベルを測定する。SHRは病態モデルであるため、手術の成功率低下や神経活動測定の不具合が懸念されるが、研究分担者の協力を得てこれらの課題を解決する。また、本年度実施したSDRへの抗ストレス食品成分投与試験結果の再現性についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の協力を来年度に集中するため、本年度の研究分担者への配分を繰り越しとする。来年度、高血圧ラットへのテレメトリーセンサ装着手術を予定しているが、病態モデルであり、より高度な準備や技術を必要とするため、専門家の協力が特に必要となる。
|