研究課題/領域番号 |
18K05517
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉井 英文 香川大学, 農学部, 教授 (60174885)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機能性脂質 / 噴霧乾燥 / 乳化 / キラヤニン / イサダオイル / EPA / DHA / 粉末 |
研究実績の概要 |
噴霧乾燥法により機能性脂質を粉末化し、再構成油滴径のサイズが噴霧乾燥粉末内の機能性脂質の安定性に及ぼす影響についてモデル化することを最終目標に、粉末内の機能性の安定性を評価している。機能性脂質のモデル物質として、スクワレンを用いた場合、およびイサダオイルを用いた場合について、乳化条件(機械的乳化、または高圧乳化)により粉末中の再構成油滴径の粉末内の脂質の安定性に及ぼす影響を検討した。スワレンについては、乳化剤を固形分中3wt%のカゼインナトリウム、イサダオイルについてはサポニン系乳化剤キラヤニンを用いて噴霧乾燥粉末を作製した。イサダオイルの乳化を、スクワレン同様にカゼインナトリウムを用いた場合は、イサダオイルに含まれるリン脂質のためか澱が発生し安定な乳化溶液を作製することができなかった。よって、スクワレンの場合は、固形分に対して3wt%カゼインナトリウム、40wt%スクワレン、マルトデキストリン(DE=19)を用いて作製した。安定なスクワレンとして、2wt%ロ-スマリーオイルを含むものを作製した。イサダオイルについては、固形分中のオイル含有率が20wt%の場合安定な乳化溶液を作製できた。この条件で、再構成油滴径の異なる噴霧乾燥粉末を作製している。作製した噴霧乾燥粉末の表面油率を、TLC-FIDを用いて測定した。固形分中20wt%のイサダオイルの表面油率は、4.2%と小さい値であった。この値は、乳化魚油噴霧乾燥粉末をカゼインナトリウムを乳化剤として用いて作製した場合表面油率と平均油滴径/平均粉末径に対する相関線と近い値であった。これら作製粉末のランシマット法により粉末の安定性評価と貯蔵実験を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、機能性脂質を、乳化剤を用いて乳化後賦形剤溶液と一緒に噴霧乾燥することにより、酸化安定性を付与した乳化機能性脂質粉末を作製するための乳化剤、賦形剤の選択、乳化条件、噴霧乾燥条件を変化させることにより油滴サイズ、粉末構造を制御し、酸化安定性の高い乳化機能性脂質粉末を作製する手法開発が目的である。特に、油滴径が機能性脂質の安定性に及ぼす影響を検討することである。初年度として、機能性脂質のモデル物質として、ガスクロで容易に残留率を測定できる物質としてスクワレンを選択した。スクワレンをモデル脂質とした場合、乳化剤としてカゼイン(3wt%)を選択した。スクワレンの安定性を、ランシマット法により評価したところ、非常に安定であったので、酸化促進剤を添加して不安定な機能性脂質のモデル物質とする必要性があることが判明した。リン脂質、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を高含有するイサダオイルの場合、魚油と比較して表面油になる油が多い。そのため、油滴径が表面油率に及ぼす影響が非常に大きく、また乳化剤の種類により乳化安定性におよぼす乳化剤の種類の影響が大きいこと、リン脂質が多いために表面油率が大きいことが判明した。そこで、イサダオイルの場合はキラヤニンを乳化剤としたほうが安定な乳化溶液が作製でき、高圧乳化により再構成油滴径が0.5μmで表面油率が4.5%の噴霧乾燥粉末を作製できた。スクワレン、およびイサダオイルともに、油滴径の表面油率に及ぼす影響が大きく、小さな油滴径をえる乳化条件が重要であることが明らかとなった。このように、賦形剤マルトデキストリン(DE=19)、乳化剤をスクワレンの場合カゼインナトリウム、イサダオイルの場合キラヤニンと基本素材を決定できた。
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今後の研究の推進方策 |
1)乳化スクワレン噴霧乾燥粉末を、スクワレン、500ppm塩化第二鉄添加、ロースマリー抽出油2wt%添加、無添加の3種類として、カゼインナトリウムを乳化剤として、油滴径の異なる噴霧乾燥粉末を作製する。この粉末内のスクワレンを安定性を、ランシマット法により評価する。また、温度を変化させてスクワレンの安定性を評価する。 2)乳化イサダオイル噴霧乾燥粉末を、キラヤニンを乳化剤として油滴径の異なる噴霧乾燥粉末を作製する。コントロールとして、抗酸化剤ローズマリー抽出油、アスコルビン酸ナトリウムを添加しない噴霧乾燥粉末を作製する。この噴霧乾燥粉末の安定性を評価する。 3)乳化スクワレン噴霧乾燥粉末、および乳化イサダオイルの噴霧乾燥粉末中のスクワレン、EPA、DHAの残留率に及ぼす表面油率の影響、および粉末径、マルトデキストリンのDEの影響を、粉末構造評価とともに検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の出張について、概算旅費で出張届をだしていたが、宿泊、航空券のセット購入のため、差額がでてしまったことによる。差額については、粉末作製の薬品購入にあてる。
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