三陸沖で採取されるオキアミ(イサダ)より抽出されるオイル(イサダオイル)中には、高度不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)を高含有するとともに、機能性生理活性物質として注目されている8-ヒドロキシエイコサペンタエン酸、アスタキサンチンを含有する。イサダオイル中の高度不飽和脂肪酸は酸化しやすく不安定であるので、食品に応用するため粉末化手法が盛んに検討されている。本研究では、イサダオイルや魚油等高度飽和脂肪酸を高含有するオイルを乳化し、噴霧乾燥により得た乳化油噴霧乾燥粉末中の高度不飽和脂肪酸の酸化安定性におよぼす粉末中の油滴径の影響を中心に検討した。 イサダオイルをサポニンであるキラヤニンにより乳化し、賦形剤としてマルトデキストリン(MD、DE=19)を用いた乳化イサダオイル噴霧乾燥粉末を得た。粉末中のEPAとDHAの安定性を調べるために、25、50、および70℃でアルミパウチ内に入れ貯蔵した。小さな油滴を含むエマルジョンから調製された粉末の場合、EPAとDHAの表面油比は高くなり、EPA、DHAは50および70ºC保管でより不安定であった。貯蔵温度が高い場合、油滴径が小さい粉末中の高度不飽和脂肪酸が、油滴径が大きい粉末中の高度不飽和脂肪酸の安定性と同一か安定性が高い結果であった。しかし、25℃で粉末を保管した場合油滴径の大きな粉末中のEPA、DHAのほうが安定であった。これは、25℃の場合油滴の比表面積が小さいほうがEPA、DHAが安定であることを示している。スクワレンを用いて乳化スクワレン噴霧乾燥粉末中のスクワレン油滴径の大きさを高圧乳化、機械的乳化により油滴径を変えて噴霧乾燥粉末中の油滴径依存性を検討した。スクワレンの場合も室温保蔵粉末中のスクワレン安定性は、油滴径が大きなほうが安定であった。
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