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2018 年度 実施状況報告書

量子ドットの粒子追跡法を用いた食品ゲルの構造変化の計測

研究課題

研究課題/領域番号 18K05519
研究機関九州大学

研究代表者

槇 靖幸  九州大学, 理学研究院, 准教授 (50400776)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード量子ドット / 食品ゲル / ソフトマター / エイジング / 粒子追跡法
研究実績の概要

カルボキシル基を持つ水溶性のCdSeS/ZnS量子ドット(直径6 nm)の分散液を用いて粒子追跡法の予備実験を実施したが、粒子間の凝集とセル表面への吸着の影響が現れるため、セル表面の改質や粒子の分散性向上等の改善を進めている。
食品ゲルの1つであるアガロースゲルの相図は、ゲル化点以下に曇点を持ち、高温から十分低温に急冷するとスピノーダル分解により数μmの相関長を持つ濃度揺らぎが現れることが知られている。直径500 nmまたは50 nmの蛍光ポリスチレン粒子を分散した 3%アガロース水溶液を急冷によりゲル化させ、ゲル中の粒子の運動を観察したところ、粒子追跡法で調査できる空間分解能ではどちらの粒子の拡散も確認できなかった。この結果の理由として、微粒子が濃厚相中に優先的に取り込まれてしまう可能性が考えられる。
非常に大きな空間不均一性を示すアガロースゲルとは対照的に、温度応答性のブロック共重合体のゲルは、架橋構造が動的であるために、比較的均一な構造のゲルのモデル物質となる可能性がある。温度応答性ブロック共重合体の一種であるMebiol Gelの水溶液について、粒子追跡法によりゲルの力学特性の空間分布を測定した。温度上昇に従ってN-イソプロピルアクリルアミドから構成されるブロックの脱水和・会合により溶液の流動性が減少しゲル化するのに伴い、粒子の拡散が抑制されるのが観察された。一方、粒子の平均二乗変位の標準偏差と平均値の比は温度にあまり依存せず、全粒子に対するvan Hove関数も温度によらずガウス分布で表現されたため、ゲル状態でもマイクロメートルオーダーでは空間的に均一であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

表面に親水基を持つCdSeS/ZnS量子ドットを導入したが、分散性が想定していたよりも悪く、その改善方法を検討する必要が生じた。後述の理由により、異なる量子ドットについて比較検討することができなかったこともあり、予想以上にこの問題に時間を要したため、量子ドットによる粒子追跡法の実験まで進むことができなかった。まだ解決には至っていないが、問題点は整理されてきており、ここまでの研究の遅れは今後取り戻すことができる範囲であると考えている。

今後の研究の推進方策

まず、量子ドットを水溶液やゲル中で安定に分散させる方法を確立する。溶液中の量子ドットのセル表面への吸着を防止するため、高分子によるセルのコーティングを行う。また、種々の量子ドットの分散性を評価し、試料中で凝集しにくい量子ドットを選定する。試料に影響がない場合には、溶液のpHを調整することで、粒子の分散安定性を向上することを検討する。これにより、量子ドットの水分散液中の粒子追跡を実現する。粒子追跡法の実施にあたって、高解像度レンズ、高輝度照明、高シグナル-ノイズ比カメラなど測定システムの整備を行う。次に、ゼラチン、アガロースなど食品ゲルを構成する高分子の希薄溶液中に量子ドットを分散させて粒子追跡法を適用し、量子ドットの高分子への吸着挙動を評価するとともに、適切な粒子の種類の選択を行う。最終的に、ゼラチンおよびアガロースのゲル中での量子ドットの粒子追跡法の測定を行い、粒子の拡散挙動とゲルのエイジングの関係について検討を行う。アガロースゲルの場合、量子ドットが濃厚相中に優先的に取り込まれてしまう可能性があるため、予め粒子を溶液中に分散させるのではなく、ゲル形成後に粒子を導入する方法についても検討する。また、ゲル中の粒子の局在は、ゲル網目と流体中の粒子の同時可視化によって確認することができる。これは2020年度以降に予定していた実験と関連しており、必要に応じて予定を前倒しして研究を進めることを検討する。

次年度使用額が生じた理由

当初は種々の量子ドットを入手し、それらの分散性や安定性を比較・検討する予定であったが、試料の受注生産のタイミングや輸入手続等の問題により納入が間に合わず、カルボキシル基修飾CdSeS/ZnS量子ドット1種類しか発注することができなかった。次年度は問題なく実施できるように準備している。
また、粒子追跡法を高精度で行うために、シグナル-ノイズ比と時間分解能に優れたカメラを導入することを予定し、その導入に先立って想定機種を用いた予行演習をするはずであったが、業者との調整が合わず、年度内での機種選定が間に合わなかった。これについても次年度は実施できるように調整を進めている。

備考

研究内容・成果を報告する研究室webページを現在作成中である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 温度応答性ブロック共重合体水溶液のレオロジー2019

    • 著者名/発表者名
      米本純太,槇 靖幸,安中雅彦
    • 学会等名
      第42回日本バイオレオロジー学会年会

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公開日: 2019-12-27  

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