研究実績の概要 |
脂肪細胞による尿酸産生に対する脂肪酸の効果を評価した。脂肪細胞は肥満時に惹起されるストレスを想定して、低酸素ストレス、酸化ストレス、炎症性サイトカインによる刺激を行った。脂肪細胞へ分化成熟後の3T3-L1細胞の尿酸産生は培養中の酸素濃度を1~5%に下げることで上昇し、2.5%で最も顕著であった。しかしながらHIF-1分解阻害剤である塩化コバルトの添加によってはこのような結果は再現できなかった。また、TNF-αの刺激によっても有意に上昇した。酸化ストレスとして、過酸化水素による刺激を行ったが尿酸産生には明確な影響は認められなかった。これらのうち、低酸素下での尿酸産生亢進作用は顕著であったため、低酸素ストレス下での脂肪酸の影響を評価した。脂肪酸としてリノール酸と共役リノール酸 (CLA) であり、CLAは9cis, 11trans型と10trans, 12cis型の3種を評価に用いた。いずれも200 μMまでは細胞毒性は認められず、この濃度以下での評価を実施した。脂肪酸の添加タイミングは脂肪細胞の分化成熟過程段階と分化成熟後の2つのパターンを設けた。その結果、分化成熟過程における10trans, 12cis-CLA処理によって尿酸産生は抑制された。また、分化成熟後においては通常酸素濃度では脂肪酸は尿酸産生に影響しなかったが、10trans, 12cis-CLAは低酸素によって誘導される尿酸産生の亢進を抑制した。以上の結果から、10trans, 12cis-CLAは肥満ストレスによる尿酸産生の亢進を抑制する可能性が期待され、今後生体レベルでの検証を進めることとした。
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