研究課題
共役脂肪酸は天然界には希少な脂肪酸で、炭素-炭素結合に共役構造を持つ特徴がある。共役脂肪酸の機能性として、特に共役リノール酸の体脂肪減少効果を始めとする抗生活習慣病作用が注目されている。本研究は、脂肪組織における尿酸代謝改善作用をターゲットとした共役脂肪酸の作用を評価することを目的とした。細胞試験においては脂肪細胞モデルであるマウス3T3-L1細胞を、脂肪細胞へ分化させて評価に用いた。その結果、3T3-L1細胞は脂肪細胞への分化、成熟によって尿酸の産生が著しく上昇することが確認された。また、プリン体代謝系においてヒポキサンチからキサンチンおよび尿酸への2段階反応を触媒する酵素であるキサンチンシダーゼ活性も分化、成熟によって亢進した。このことから3T3-L1細胞は脂肪細胞におけるプリン体代謝の評価に有用であることが示された。次に、分化成熟した3T3-L1細胞を低酸素条件下で培養し、尿酸産生およびキサンチンシダーゼ活性におよぼす影響を評価した。その結果、24時間の低酸素処理によってこれらのパラメーターは増加することが示された。0.2 mMの共役リノール酸で処理した3T3-L1細胞は、低酸素条件において尿酸産生が抑制されていたが、キサンチンシダーゼ活性には影響しなかった。次に、8週間の高脂肪食投与によって肥満を誘発した肥満モデル動物において、共役リノール酸の尿酸産生への影響を評価した。共役リノール酸は食餌に1%添加し、1週間投与した。この条件では共役リノール酸の体脂肪減少効果は認められず、腎機能にも影響を与えなかった。血漿尿酸値は共役リノール酸投与で緩やかに減少する傾向が認められた。以上の結果より、共役リノール酸は脂肪細胞の低酸素ストレスを解消することによって、尿酸代謝を改善する可能性が示された。
すべて 2021
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