研究実績の概要 |
水産物の食中毒の原因物質の一つとして知られているヒスタミンは、ヒスチジンにヒスタミン産生菌が持つ脱炭酸酵素が作用し、ヒスタミンに変換されることによって生成される。一方、最近の研究で、ヒスタミンの生成は本酵素の作用だけではなく、ヒスチジンが脂質酸化物との非酵素的反応により生成される可能性が示唆されている。しかし、詳細な反応機構は不明である。2018年度は、食品の品質に関与するヒスタミンおよびその他の生体アミン類の生成機構を明らかにするために、食品中に存在するヒスタミンをはじめとした生体アミン類の一斉分析法の開発を行った。2019年度は、脂質酸化物とヒスチジンまたはヒスチジン含有ジペプチドの反応性について検討を行った。その結果、脂質酸化物はアルデヒドに着目したが、直鎖のアルデヒドより、分鎖アルデヒドや構造中に二重結合を持つアルデヒドの反応性が高い事が明らかとなった。2020年度は、生体成分の酸化によるアルデヒド類に着目し、高度不飽和脂肪酸由来のアルデヒドであるAlka-4-enalsやAlka-2,4-dienalsとヒスチジンとの反応性に着目した結果、炭素数6および7個から生成されるアルデヒドとの反応性が高いことが示された。なお、この生成によるヒスタミンそのものの生成については確認までは至らなかったが、前駆物質であるヒスチジンの反応による減少は確認された。今後の検討課題として、ヒスチジンとアルデヒドの反応条件に関する再検討および脂質酸化物に限定せず他のアルデヒド類にも着目してヒスチジンの生成機構について解明を行う。
|