研究課題/領域番号 |
18K05528
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
田村 基 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 主席研究員 (70353943)
|
研究分担者 |
中川 博之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (30308192)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ケルセチン / 腸内菌叢 / レスベラトロール / マウス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ケルセチンの分解を抑制もしくは促進する腸内菌叢の特徴を明らかにし、ケルセチンの生体利用を高める腸内菌叢を明らかにすることである。6週齢ICR雄マウス14匹をAIN-93Gで一週間予備飼育してから、マウスを7匹ずつ2群に分けて、一方には、0.05%レスベラトロール+0.025%ケルセチン添加食を与え(QR群)、他方には、0.025%ケルセチン添加食を与えて(Q群)それぞれの餌でさらに2週間給餌して飼育した。飼育試験後に解剖を行い、内臓脂肪重量を測定し、肝臓、盲腸内容物、血液等を採取した。血漿および盲腸内容物のケルセチン濃度は、血漿および盲腸内容物希釈液50μLにTypeH-5 β-グルクロニダーゼを含む酢酸緩衝液50μLを作用させてケルセチン抱合体を脱抱合化し、2倍量の酢酸エチルによる抽出を2度行い、抽出液を濃縮後80%メタノールに再溶解し、LC-MS/MSを用いて分析した。また、盲腸内容物の短鎖脂肪酸分析、肝臓脂質分析等を行った。肝臓の脂質含有量、トリグリセリド含有量については二群間で有意な差は認められなかった。しかし、盲腸内容物のケルセチン量、ケルセチン+イソラムネチン量とレスベラトロール量はQR群で有意に高値を示した。レスベラトロールが腸内菌叢によるケルセチン分解を抑制している可能性が示唆された。血漿ケルセチン濃度は、QR群で高い傾向が認められた。しかし、イソラムネチン濃度は、二群の間で差は認められなかった。QR群は、盲腸内容物中の酪酸濃度がQ群よりも有意に高値を示した。レスベラトロールが腸内菌叢の短鎖脂肪酸の産生に影響をおよぼしていた。ケルセチンの分解抑制的な腸内菌叢を食餌性レスベラトロールが形成し得る可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レスベラトロールはブドウの果皮に含まれるポリフェノールの一つであり、機能成分の一つとして知られている。In vitroにおいて、レスベラトロールは、ケルセチン分解菌のケルセチン分解を抑制することが報告されているが、in vivoでのケルセチン分解抑制作用については検討されていない。今回、腸内菌叢のケルセチン分解抑制が期待されるレスベラトロールを動物試験の飼料に添加し、レスベラトロールとケルセチンを両方含む餌をマウスに与えた場合と、ケルセチンを含む餌をマウスに与えた場合とで、消化管内容物のケルセチン量を比較したところ、レスベラトロールとケルセチンを両方含む餌をマウスに与えた場合の方が、ケルセチンを含む餌をマウスに与えた場合よりも消化管内容物のケルセチン量が多い結果となった。腸内細菌のケルセチン分解に対するin vitroのレスベラトロールの抑制効果が、in vivoでも期待される可能性が示唆された。今回の試験から、腸内菌叢のケルセチン分解を抑制する食品成分の候補としてレスベラトロールを見出すことができ、ケルセチン分解抑制性腸内菌叢の解析が進展すると期待されるため。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の研究において、ケルセチンとケルセチン量に対して二倍量のレスベラトロールを含む餌をマウスに投与すると、レスベラトロールは、ケルセチンの腸内における分解を抑制する可能が示唆された。次年度以降の計画においては、ケルセチンとケルセチン量に対して二倍量のレスベラトロールを含む餌をマウスに投与した場合と、レスベラトロールは含まず、ケルセチンを含む餌を投与した場合の腸内菌叢の構成の違いについても検討する。レスベラトロールが腸内菌叢のケルセチン分解を抑制するには、飼料中のケルセチン量に対するレスベラトロールの量も重要なポイントであると考えられる。そこで、ケルセチン量に対してレスベラトロールの量を同量にした飼料をマウスに投与して、ケルセチンの腸内代謝や腸内菌叢の動態に及ぼすレスベラトロールの効果をさらに検討する必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
消耗品類については、キャンペーン価格品を優先的に購入した。消耗品類が当初予定した金額よりも安く購入できたため。次年度では、マウスの分子生物学的検討を行うために、遺伝子解析関連試薬の購入等に使用する。
|