研究課題/領域番号 |
18K05529
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
大久保 誠 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 講師 (60381092)
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研究分担者 |
谷口 成紀 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 助教 (10549942)
前田 俊道 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (20399653)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蒲鉾 / 火戻り / ミオシン / プロテアーゼ / 筋原線維タンパク質 |
研究実績の概要 |
蒲鉾の品質低下現象である火戻りの主要な原因酵素と考えられる筋原線維結合型セリンプロテアーゼ(Myofibril-bound serine protease, MBSP)における、筋原線維タンパク質との結合様式及びミオシン重鎖に対する分解作用を調べた。 【MBSPと筋原線維との結合】MBSPが筋原線維にどのように結合しているかを明らかにするため、マエソの筋肉から希釈沈殿及び硫安塩析によりミオシンを精製し、その過程で蛍光合成基質を用いてミオシンに含まれるMBSP活性を測定した。希釈沈殿により得られたミオシンを4℃で一ヶ月間保存した結果、ミオシン重鎖が分解され、ミオシン尾部が生成した。この分解はセリンプロテアーゼインヒビターであるPefabloc SCの添加により抑制された。さらに、ミオシン尾部をゲル濾過に供した結果、ミオシン尾部と同じ溶出位置にセリンプロテアーゼ活性が検出された。以上のことから、MBSPはミオシン尾部に結合していると推定された。 MBSPと筋原線維タンパク質の結合部位を調べるため、予備実験により、コイを数ヶ月間にわたって餌止めすると筋肉中のMBSP活性が約90倍に上昇した。本サンプルを用いて、コイMBSPの免疫組織染色を実施するため、コイMBSPに対するポリクロナール抗体を作成した。 【ミオシンに対するMBSPの作用】一般に、火戻りが強く蒲鉾にならないと言われているカナガシラの筋肉から筋原線維タンパク質を調製し、同画分に含まれるMBSPによるミオシン重鎖の分解を調べた。いずれの魚種でも火戻りの温度帯である55℃でミオシン重鎖の分解がみられたが、アクチンの分解は認められなかった。このような筋原線維タンパク質の分解パターンは、蒲鉾製造過程で生じる火戻りの分解パターンともよく一致していた。一方、カナガシラの筋形質画分には、MBSPと非常に類似した特性を有するセリンプロテアーゼが存在することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ワニエソの筋肉から精製したミオシン尾部にセリンプロテアーゼ活性が検出されたことから、MBSPがミオシン尾部に結合していることがほぼ特定された。マエソ筋原線維タンパク質画分に含まれるMBSP量は極めて少なく、免疫組織染色法による検出は困難であったため、飢餓により著しくMBSP活性が上昇するコイを用いた免疫組織染色法を実施するため、コイMBSP抗体を作成した。 カナガシラのMBSPを同定を試みた結果、筋形質画分に極めて類似したセリンプロテアーゼが存在することが分かった。筋原線維タンパク質に含まれるMBSP活性は魚種ごとに大きく異なるため、カナガシラにおいては筋原線維タンパク質から分離しているMBSPが存在するという、予期していなかった可能性も示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
コイMBSPの免疫組織染色を行い、筋原線維におけるMBSPの結合部位を調べる。 ワニエソのミオシンから、インタクトなミオシン及びMBSPによるミオシン分解産物をそれぞれ調製し、これらを添加したワニエソ筋原線維タンパク質のすり身を調製する。これらを本加熱して調製した蒲鉾の物性を測定し、MBSPの作用と火戻りの関係を調べる。 カナガシラの筋形質画分に存在するMBSP様プロテアーゼは、非常に強い火戻り作用を示すことから、本酵素を精製して火戻り及びMBSPとの関係を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に使用したが、コロナウィルス感染症により水産学会が紙面発表となったため、参加費のみ支出され、旅費が残額として生じた。また、見積金額と実際の支払金額との間に多少の相違があり、少額の残額が生じた。
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