研究課題/領域番号 |
18K05530
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
時田 佳治 群馬大学, 大学院保健学研究科, 助教 (70588003)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 硫酸化多糖 / 海産物 / 腸内細菌 / 活性硫黄分子種 |
研究実績の概要 |
サメ軟骨由来コンドロイチン硫酸や海藻由来のフコイダンをはじめとした海産物由来硫酸化多糖海産物由来硫酸化多糖は種々の健康効果が謳われて市販されている。その一方でその作用機序はいまだに明らかになっていない。海産物由来硫酸化多糖の一つであるフコイダンは、申請者のこれまでの研究成果から経口摂取後は分解されずに消化管から生体内にごくわずかに吸収されるものもあるがはほとんど吸収されないことが明らかにしてきた。これまで硫酸化多糖の効果の原因分子として消化管内で腸内細菌によって生成される代謝産物である短鎖脂肪酸(SCFA)が報告されているが、海産物由来硫酸化多糖の一つであるフコイダンについては、SCFAのみではその効果を説明できない。そこでフコイダンの作用機序が消化管内で腸内細菌の発酵によって生成される活性硫黄分子種によるものであるとする仮説を立てて実験を進めた。 その仮説を証明するにあたって、まずは海産物由来硫酸化多糖からの活性硫黄分子種賛成の有無を確認するため、マウスでの糞便中ならびに腸内容物内の活性硫黄分子種の一つである硫化水素産生量を定量する方法を確立し、その測定系を用いて精製フコイダン経口投与マウスにおける消化管内硫化水素産生を評価した。その結果、1週間程度の精製フコイダンの経口摂取後に対照群に比べて消化管内での硫化水素濃度が上昇すること、さらにそれが小腸ではなく大腸で見られることを示唆する結果を得た。 さらに、海産物が生活習慣病予防といった健康増進に寄与することを共同研究により明らかとした。 今後は消化管内の活性硫黄分子種の同定に向けた方法の開発と消化管内の活性硫黄分子種の同定、メタゲノム解析による代謝酵素の同定ならびに精製フコイダンではなくフコイダンを含む海藻の長期摂取による産生量の変化を評価することで、精製物と含有食品摂取の効果の違いや食習慣との関連を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題は海産物由来活性硫黄分子種の示す健康効果の作用機序を消化管内での脱硫酸化活性とそれによって生成する硫黄分子種にあるとする仮説のもとで作用機序の解明を目指したものである。本年は消化管内の硫化水素産生評価のために消化管内容物と糞便からの硫化水素定量法を確立し、海産物由来硫酸化多糖の一種であるフコイダンの経口摂取からフコイダンによる活性硫黄分子種の生成を示唆する結果を得ることができた。 その一方で、当初計画では初年度はフコイダンの脱硫酸化度を評価系の確立を目指していたが、評価系の確立に必要なフコイダンの分解を市販のフコシダーゼで行うことができなかったことから、脱硫酸化度の評価法の確立は次年度以降に見送った。フコイダン分解酵素は次年度以降に計画している腸内細菌のメタゲノム解析により同定されたフコイダン分解酵素並びに脱硫酸化酵素から遺伝子組み換え体を得ることで確立を目指す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はマウスの消化管内での海産物硫酸化多糖として海藻由来フコイダンならびにサメ軟骨由来コンドロイチン硫酸やナマコ由来フコシルコンドロイチン硫酸といった硫酸化多糖における消化管内の硫化水素産生を評価し、糞便によって硫化水素産生量の経時的な変化も追跡する予定である。さらに、前年度に消化管内で検出された硫化水素が遊離型硫化水素か酸不安定型硫黄由来硫化水素かを明らかにするため、新たな評価系を確立する予定である。 さらに、海産物由来硫酸化多糖の経口摂取によって硫化水素産生が亢進している糞便中の腸内フローラの解析のためにメタゲノム解析を行うことで、海産物由来硫酸化多糖から活性硫黄分子種が生成する過程の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた硫酸化度評価法の開発に際して、市販の分解酵素によって評価系の構築が難しいことが分かったため、それに係る予算の一部を次年度以降に繰り越した。その残金は当該測定系の確立に使用する予定である。
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