研究課題
アレルギー疾患に対する治療は未だ確立されていない。近年「食べて治す」という免疫寛容誘導を利用した経口減感作療法が注目されているが、アレルギー原因物質(アレルゲン)を摂取させる方法であるため、アナフィラキシー等の重篤な副反応の誘発リスクがあり、標準的治療法とは成り得ていない。申請者は、蕎麦の主要アレルゲンFag e 1のアレルギー性が糖鎖修飾やリン酸修飾により低減化すること、分子修飾Fag e 1の経口摂取は免疫寛容を誘導できることを見出した。本研究では、より安全で有効性の高い経口免疫寛容誘導剤の開発を目指し、低アレルゲン性リン酸化抗原の免疫寛容誘導機構を解明することを目的とした。本年度は、蕎麦アナフィラキシー症状の要因とされるFag e 2を対象にリン酸化の効果を検証した。はじめにドライヒーティング法により作製したリン酸化Fag e 2(P-Fag e 2)は患者血清中IgE抗体との結合能を低減化させることを確認した。続いて、Fag e 2感作マウスを用いてP-Fag e 2のin vivoでの効果を検証した。マウスは①未感作群、②抗原感作群、③抗原感作後-抗原摂取群、④抗原感作後-リン酸化抗原摂取群の4群に分け、抗原感作後、通常飼料、Fag e 2混餌飼料、またはP-Fag e 2混餌飼料を6週間自由摂取した。その結果、P-Fag e 2摂取により血清中の特異IgE濃度が低下する一方、特異IgA濃度が増加することが明らかになった。このとき、P-Fag e 2摂取群において、パイエル板細胞での濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)が増加することが示された。パイエル板細胞では、Th2型サイトカインであるIL-4の低下、およびTfh関連サイトカインのIL-21の増加が認められた。以上の結果より、Fag e 2のリン酸化はTfh細胞の分化誘導によりTh2細胞の分化機能を制御してアレルギー反応を抑制させることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マウス実験では大量のFag e 2を必要とするが、酵母発現系により十分量のFag e 2を調製できており、当初計画していたマウス実験を円滑に実施することができた。現在、並行して別の抗原の酵母発現にも取り掛かっている。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は、LC-TOF-MSを用いて、抗原中のリン酸修飾されたアミノ酸部位を同定する。また、より詳細な作用機序を解明すべく、DCreg (CD11c+CD103+)を採取し、サイトカイン産生量を測定し、樹状細胞の制御に及ぼす影響について検討する。さらに、スギ花粉抗原Cry j1、ダニ抗原Der f1など別の抗原を対象とした実験を行い、本手法の応用可能性を検証する。
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Molecules
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