研究課題/領域番号 |
18K05531
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
片山 茂 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (30443922)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫寛容 / アレルギー / 分子修飾 / リン酸化 |
研究実績の概要 |
アレルギー疾患に対する治療は未だ確立されていない。近年「食べて治す」という免疫寛容誘導を利用した経口減感作療法が注目されているが、アレルギー原因物質(アレルゲン)を摂取させる方法であるため、アナフィラキシー等の重篤な副反応の誘発リスクがあり、標準的治療法とは成り得ていない。申請者は、蕎麦の主要アレルゲンFag e 1のアレルギー性が糖鎖修飾やリン酸修飾により低減化すること、分子修飾Fag e 1の経口摂取は免疫寛容を誘導できることを見出した。本研究では、より安全で有効性の高い経口免疫寛容誘導剤の開発を目指し、低アレルゲン性リン酸化抗原の免疫寛容誘導機構を解明することを目的とした。本年度は、Fag e 2感作マウスの腸管パイエル板(Peyer's patch:PP)および腸管膜リンパ節(Mesenteric lymph node:MLN)を用いて、腸管免疫系におけるリン酸修飾Fag e 2(P-Fag e 2)のIgA産生制御に関する検討を行った。その結果、Fag e 2感作マウスのPPおよびMLN細胞において,P-Fag e 2添加はFag e 2特異IgA産生を増加させるが、この産生増加は抗IL-6および抗IL-21中和抗体により抑制することが示された。Toll様受容体(Toll-like receptor:TLR)は樹状細胞に発現し、IL-6の産生に関与することが知られている。そこで各種TLR阻害剤を添加したところ、Fag e 2感作マウスのMLN細胞において、P-Fag e 2添加で見られたIL-6産生増加はTLR9阻害剤の添加により抑制することが示された。以上の結果より、P-Fag e 2は腸管免疫系における樹状細胞のTLR9の活性化を介してIL-6の産生増加、さらにはTfh由来IL-21の産生増加によりIgA産生が増強されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作用機序の一端として樹状細胞のTLRが関与する旨の知見を得ており、当初計画していた実験を円滑に実施することができた。現在、並行して、リン酸修飾されたアミノ酸配列の同定とスギ花粉抗原Cry j 1の抗原の酵母発現にも取り掛かっている。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、抗原中のリン酸修飾されたアミノ酸部位について、LC-TOF-MSを用いて同定を試みる。さらに、スギ花粉抗原Cry j1、ダニ抗原Der f1など別の抗原を対象とした実験を行い、本手法が普遍的に応用可能であるかどうか検証する。
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