申請者はこれまでに,ソバ主要アレルゲンFag e 2のソバアレルギー患者血清IgEとの抗体結合能がリン酸修飾により低下すること,さらには,リン酸修飾Fag e 2(P-Fag e 2)の経口摂取がFag e 2感作マウスのアレルギー症状を軽減させることを見出した。また,P-Fag e 2は免疫反応の起点となる樹状細胞に作用し,TLR9を介したIL-6産生増加を誘導させることを明らかにしたが,アレルギー発症の中心的な役割を担うマスト細胞の脱顆粒に及ぼす影響については不明であった。そこで,アレルゲンへのリン酸修飾がマスト細胞の脱顆粒反応に及ぼす影響について検討した。ラット好塩基球様細胞株RBL-2H3に感作マウス血清から得たFag e 2特異IgE抗体で感作させ,Fag e 2を抗原として刺激したところ,抗原濃度依存的にβ-hexosaminidase放出量が増加することが示された。一方,P-Fag e 2の刺激により,β-hexosaminidase放出量はFag e 2刺激下と比較して半分程度にまで低下することが示された。続いて,Fag e 2のエピトープ配列の合成ペプチド(EGVRDLKELPSK)とセリン残基1ヶ所をリン酸修飾させた合成ペプチド(EGVRDLKELPpSK)を用いて脱顆粒試験を行った。その結果,リン酸修飾したエピトープペプチドにおいて有意な低下は認められたが,その低下は数%程度と顕著な変化は得られなかった。以上より,アレルゲンへのリン酸修飾はIgE結合能低下によりマスト細胞の脱顆粒反応を抑制させるが,リン酸修飾が少ないペプチド断片では完全な反応抑制にまで至らないことが示唆された。
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