研究課題/領域番号 |
18K05533
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小原 敬士 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (10284390)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 抗酸化評価 / 近赤外 / 一重項酸素 / ラジカル / 食品・飲料 |
研究実績の概要 |
本課題は、紫外・可視部の光吸収や白濁による散乱の妨害を受けにくい近赤外光の時間分解計測の特徴を活用し、食品・飲料,野菜・果実等をそのままサンプルとして一重項酸素やHO・などの活性酸素に対する抗酸化活性を多面的な視点から評価する手法の開発研究である。 (1)活性酸素との反応により、近赤外に吸収・発光を示す抗酸化評価のプローブ化合物の開発においては,2019年度に合成に成功した近赤外プローブ化合物(吸収・発光 ~700 nm)について、ラジカル発生剤等を用いてスピントラップEPRと発光測定による方法で、一重項酸素、HO・、アルキルラジカルとの反応性の評価を実施した。本研究で合成したプローブが一重項酸素に特異的なプローブ活性を示すことがわかり、設計性能が実現できていることを確認した。プローブの分解も見られたことから、安定性については課題があることも分かった。 (2)食品・飲料などの多成分含有系サンプルの抗酸化活性を多面的に評価する測定系セットの開発,(3)野菜・果物・食品・飲料試料への適用,においては、市販の生鮮野菜、加工豆食品について、複数の種類の溶媒系の測定系セット候補による一重項酸素消去活性評価を行った。冷凍枝豆,水煮大豆,納豆をサンプルに、すりつぶして溶媒セットで抽出、希釈して計測、という単純な操作により、定量的な抗酸化値の挙動が得られた。一般消費者への提示を念頭に、本法で得られた消去速度定数を標準抗酸化剤のビタミンE量に換算表示する方法を提案した。一重項酸素消去活性に関する換算ビタミンE量は、文部科学省公表資料における食品中の総ビタミンE量と比較して、数倍の大きさとなり、サンプル中の抗酸化活性物質の総量に対する評価値が得られたと推察できる。溶媒セットの違いによる抗酸化活性挙動の変化も見られたが、さらなる検討が必要である。 本研究成果の一部について、学会発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大による措置により、活動が制限されたこともあり、研究計画より全体としてやや遅れている。 当初計画で2020年度までに実施を予定していた、(1)近赤外吸収・発光を持つラジカル検出プローブの合成と活性酸素との反応性評価,(2)多成分含有系サンプルの抗酸化活性を多面的に評価する測定系セット開発における実サンプルの試行,を、ほぼ計画通り実施することができたが、成果発表や手法の改良については不十分である。また、新規プローブの開発・合成のための時間的なマンパワーも不足気味である。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は、「(1)近赤外吸収・発光を持つラジカル検出プローブの改良と合成」を中心に研究を推進する。化学合成において最適な合成ルートを探索しながらの開発となる。また、「(2,3)多面的評価のための測定系セット開発と生の野菜・果物・食品・飲料試料への適用」については、引き続き、生の食品系サンプルの試行測定を実施し、評価結果をレーダーチャートに表示できるよう、手法の確立を目指した研究を進める計画である。 なお、研究進捗の遅延に伴い、2022年度まで本研究を延長する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止措置により、研究活動の一時停止、調査・成果発表及び教育活動に係る出張等もすべてキャンセルとなった。その結果、通常校費の使用も滞ったため、基金である科研費の使用を後回しにしたことで、想定外の次年度使用額が生じた。 2021年度も、計画より使用予定金額が減少することが見込まれる。そのため、2022年度への研究計画の延長を視野に入れている。
|